ONE MORE TIME 22
(アキラサイド)

「まあまあ、皆さん良くいらしてくださったわね」

日比野さん達が僕の部屋で一息ついた頃、母が手作りのお菓子と飲み物を持ってきた。

「アキラさんがお友達を家に招待するなんて、初めてて嬉しいわ♪」

母のテンションがいつも以上に高いな…。

「沢山作ったから足らなかったら遠慮なく言ってね」
「えっ?友達呼んだの初めてって…」
「そうなのよ〜。囲碁に熱中してて友達と遊ぶよりも何よりも碁が一番だったのよね」

日比野さんの質問に困ったような顔で応える母に…

「嘘!?」

と驚く森田さん。
友達を家に招かないことはそんなに不思議なことなのかな?

「泰ちゃんも碁に力入れすぎて、同じような時期あったよね?」

有坂さんにツッコまれて気まずそうな顔になった小林さん。
有坂さんが小林さんにツッコんでる所なんて初めて見たかも?

「碁しかやって来なかったアキラさんが一杯企業に就職してやっていけるのか心配だったけど、皆さんを見て安心したわ」

母はテキパキと配膳して「ゆっくりしてね」と言って、ニコニコしながら部屋を出ていった。

「塔矢さんのお母さんの手作りの料理、全部美味しいっ!」
「塔矢のお母さん凄い美人!しかもこんなに料理が上手いなんて最高じゃん」

日比野さんの森田さんが、あっという間になくなりそうな勢いで食べ始める。

「塔矢さんが料理上手な理由が解ったわ。本当に美味しい」

碁の勉強に集中力したかったからショッピングとかは逃げたけど、料理だけは逃げられなかったんだよね。
今となっては感謝だけど。

何日もかけてウキウキしながら準備してたらしいから、こんなに美味しそうに食べてくれたら母も喜ぶだろうな。

「こんにちは」

ワイワイと盛り上がってる所に用事で棋院に行っていた進藤が入ってきた。

「はあああああ」

有坂さんの叫び声が進藤が同時だった。
有坂さんの携帯にメールが届いたらしい。
そして…

「ちょっと進藤さん、これどういうこと!?」

と、まだ座ってもいない進藤に詰め寄って携帯の画面を見せていた。

「塔矢さんが妊娠って…」

!!!

有坂さんの言葉に部屋の空気が凍った気がする。

(そういえば発表今日だったな…)

と呑気に考えてたら…

「「「えーーーーーっっ!?」」」

日比野さんと森田さん、そして有坂さんの悲鳴が木霊した。 耳が痛い…。

「塔矢さんが授かり婚!?」
「イメージからかなり遠いんだけど?絶対そういうのはやらないようタイプだと思ってた」

別にやろうと思ってやった訳ではないんだけど…。

「ちょっと泰ちゃん、妙に落ち着いてるけど、もしかして知ってたの?」

有坂さんの問いかけに、小林さんは肯定の笑顔のVサイン。

「狡い…」

有坂さんが何故か落ち込んでる。

「ていうか、そんなことはどうでも良いのよ!ちょっとアンタッ!!」
「えっ?あっ、はい」

日比野さんの迫力に押されたのか、思わずという感じで返事をする進藤。

「私達の塔矢に何してくれてるの!!」

更に日比野さんは進藤の胸ぐらを掴んだ。

「見た目通りのチャラ男だったってこと?」

チャラ男って…。
それはあんまりじゃないですか…。
普段は進藤のこともイケメンって言ってるのに…。
それを言うなら日比野さんが一緒にご飯食べた緒方さんの方が……。
後で「日比野…ビックリし過ぎてパニックになってたんだよね」って苦笑いしながら言ってたから納得したけど、ちょっと驚いた。

「ちょっと日比野さん!僕の推しになんてこと言うのさ」
「えっ?有坂、アンタコイツのファンなの?」
「そうだよ」
「あっ、そう。でも今はそんなこと関係ないわよ!!」
「ちょ…ちょっと…」

日比野さんの手に更に力が入って、進藤は益々苦しそう。
有坂さんは進藤を日比野さんから助けようとしてるみたいけど、逆効果になっているみたい。

「あらあら進藤さん、大変ねぇ…」

追加の料理を持ってきた母がのほほんと微笑んでるし…。

「……………」

これ、どうやって収拾すれば良いんだろう?



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