ONE MORE TIME 14
(ヒカルサイド)

「進藤本因坊」

明日も休みをもぎ取ったから塔矢の部屋に向かってたら、金髪男に呼び止められた。

「誰?」

オレのファン?

「初めまして。僕、棋戦のスポンサー企業に勤めてる有坂といいます。今お時間良いですか?」

良いわけないじゃん。 もぎ取った休みで塔矢とイチャイチャしようと思ってたのに。

「塔矢さんはうちの同僚に捕まってるから、行っても待ち惚けだと思いますよ」

えーっっ!!ウソ?何してくれてんの。

「海王中囲碁部出身としては、是非打ってみたくて」

う~ん、どうしよう。
スポンサー企業の社員に冷たい態度取ったら不味い?
でも、急に言われたから無理に受ける必要はないと気もするし。
う〜〜ん…。

「塔矢さんさんと再会出来たお礼ということでお願い出来ませんか?」
「えっ?なにそれ…」
「担当者を決めるメンバーに僕も入ってたんですよね。だから塔矢さんが進藤本因坊の担当に押してたんですよ」
「…………」
「いや〜進藤本因坊と塔矢さんのファンとしては、またお二人で切磋琢磨してる所を見たいんで」

よく喋る奴だな…。
再会してから塔矢には、他人行儀な扱いされたからコイツの行いが役に立ったか解らないんだけど……。
でも担当にしてくれたお陰で話せるチャンスもあった訳だし。
お礼はしておくべきかな。

…色々考えて有坂さん…だっけ?と一局打つことにした。





●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●





うわ~。一人暮らしのサラリーマンにしては広くないか?
雰囲気もアレだしさてはコイツ、相当なおぼっちゃまじゃないの?
碁盤も高級なやつだし。



「「お願いします」」

早速、打ち始めるオレ達。

パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!

…あれ?
…海王中囲碁部出身なんだよな?
それにしては、ちょっと弱すぎないか?

「…ありません」

有坂さんが投了した。

「海王中囲碁部出身だから強いと思ってました?」

正直思ってました。

「僕、ホントに弱いんですよね。これでも活躍が期待されてたプロ棋士の孫なんだけど、才能は全く受け継がなかったな」
「はっ?」
「僕の祖父、中学でプロになって20歳で名人居奪取まであと一生って所で「好きな人と海外行きます」って辞めちゃったんだよね」

何それ?
てか、その話オレに関係ある?

「海王中入ったら僕の祖父のことを知ってる人がいて囲碁部に入ることになっちゃったんですよね。弱いのに…」

そう言って、ため息を零す有坂さん。

「で、囲碁部入ったらある女の子に一目惚れして、勢いで「オレが碁でお前に勝ったら彼女になってもらう」つて啖呵切ったんだけど…」

何か懐かしさを感じるような気が…。

「ボロ負けしたんですよね…」

自分の棋力を忘れて、無謀だったんですよ…と言って苦笑いする有坂さん。

「進藤本因坊は違いますよね。2年でプロになって塔矢さんのライバルになって、今は彼氏でしょ」

へっ?

「あれだけ塔矢さんの部屋に入り浸ってたら気付きますよ」

あちゃ〜〜。
見られてた?

「進藤本因坊は有名人なんですから気を付けてくださいね」
「はい……」

気をつけてたんだけどな…。
もし見られてたことが塔矢に知られたら、もう会ってくれないかもしれない。

「気付いてるのは僕と今塔矢さんと一緒にいる小林さんだけなんて、まあ安心してください」

って、とりあえず一安心…なのか?
本気で気を付けよう。

「いや〜囲碁大会で海王中VS葉瀨で塔矢さんと進藤本因坊の対局を見た時は自分の悔しさを思い出したと同時に、2人のファンになったんですよ」

そこまで言って、有坂さんが色紙を差し出して…

「サインしてくださいっ!」
「あっ、はい」

オレは色紙にサインを書いた。
ってか、あの大会見てたの?

「あの大会で悔しそうにしてた進藤本因坊が、あっと言う間にプロになって塔矢さんとライバルになって、遂に恋人になっちゃうなんて凄いです!尊敬します!」

でも、自分の気持ちに気付かなくて2年淋しい思いしましたよね…と言う有坂さん。

ハイハイ、それはその通りでございます。

えっ、ちょっと待て!
塔矢を探してることも塔矢が好きなことも、当たり前だけど外には出してないのに、なんで解るんだ?

「えっ?なんでそのこと…」
「追っかけてたのを見てきたんで気付きましたよ。お互い両思いなんだな〜って。なのに…」

有坂さんからの視線が痛い…。
ホント、オレが鈍感で気付かなかったのが悪かった訳で…。
気不味い…。
よし、話題を変えよう。

「ところで啖呵切った相手には勝てたのかよ」
「10年以上勝ててません!」

堂々と言うことかよ…。
ちょっと呆れる。

「もうそれって普通に告白したら良いんじゃないの?」
「だよね~。でも絶対失敗する!」
「そんなのやってみないと解らないんじゃ?」
「僕、肝心な所でドジ踏む人生だから…」

…そうなんだ…。



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