ONE MORE TIME 13
(アキラサイド)

「適当に座って」
「あっ、はい」

小林さんが座布団を持ってきて置いてくれたので、そこに座った。

大体日比野さんの家に集まるから、小林さんの家に来るのは初めてだな。

けっこうシンプルな部屋、僕好みかも。

人の部屋をジロジロ見るのはあまり良くないと思いながら、小林さんの部屋わ見回していると、碁盤が目に飛び込んできた。

どうして碁盤が!?

「あ〜あ、埃かぶってるな。この所忙しくて棋譜並べも掃除も出来なかったし…しょうがないか」

そう言って、碁盤や碁笥わ丁寧に拭いている小林さん。

「小林さんて打てるんですか?」
「うん。今日は来てもらったのも塔矢と打ちたかったからなんだ」

碁盤と碁笥を僕の前に置く。

「私からのお願い。一局打って」
「えっ?」
「進藤本因坊と仲直りというか付き合い始めてても、まだ打つ気にはならない?」

ちょちょちょちょちょ…ちょっとっ!

「もう色んなわだかまり溶けたと思ったけど、まだ早かった?」

小林さんが笑ってる。
しかもドヤ顔で。

碁が打てるなら僕と進藤がライバルなのは知ってるとは思うけど…。
まさか…。

「僕と進藤がプライベートで会ってるの知ってたりします?」

小林さんからの更なるドヤ顔とVサイン。

あ……。

「言っときますけど、僕と進藤は付き合ってるわけではないので」
「毎週のように進藤本因坊がアンタの部屋に入り浸ってる状況で、付き合ってませんは無理があるじゃない」

………/////

「別に言い触らしたり詮索しないから安心して」

小林さんは言い触らしたりしないといのは解る。

「ただ日比野の無茶ぶりから助けてあげたお礼として一局打って。互いで」

確かに日比野さんの無知振りから助けてもらったし…小林さんとなら打っても良いかな。

「解りました」
「ヤッター!じゃあさっそく打とう」

握って僕が黒になった。

そういえば、直に碁石持って対局するの久し振りだな。

「「お願いします」」

パチ、パチ、パチ……。

数手も打てば相手の棋力は解る…。
解るけど…。

(強い…)

プロでも通用しそうだ。

「何とか私が半目残ったか…」
「僕、ここで読み間違えましたね」

進藤に「早く復帰しろよ」って言われてるけど、これはまだまだ無理かな。

「塔矢アキラ様と本気で打てて満足♪欲をいうとバリバリのプロの時に打ちたかったけど、指導碁料高いからさ」
「こんなに強いのにプロじゃないなんて…」

小林さんがプロだったら、女流タイトル全て保持は難しかったかもしれないな。

「実は私、海王中囲碁部のOBなんだよね」

えっ?小林さんって中学の先輩なの?

「そんなこと一言も…」

「うん。出会った頃の塔矢って碁の一切言わなかったから知られたくないのかな?と思って」

あの頃は、プロ棋士の自分を知らない所に行きたい気持ちが強かったから…。
碁ことを考えると進藤に繋がって嫌だったし。

「日比野が無理矢理セッティングした合コンで、有坂に年齢聞いてた時、バレるかも?って焦ってたでしょ?」

あの時は本当に焦ったね。

「それは置いといて、塔矢が海王中に入学した頃さ、日高が「あの塔矢アキラが入部してきて三将にしてくれ」って言ってきたって、凄いテンションで電話してきたんだよね」

あのテンションは凄かった…と小林さんが苦笑する。
日高先輩…一体どんなテンションだったんだ?

「で、即プロになっても可笑しくないアンタが、何で囲碁部に?って思って気になって大会を見に行ったんだよね。有坂と2人で。対局後のアンタと進藤本因坊の顔か忘れられないよ」

あ…そんなこともあったな…。
懐かしい…。

「あれからあっという間に、2年でプロになった進藤本因坊には驚いたね。有坂なんて本気で惚れちゃってるからね」

惚れてるって何に?
はっ?まままさか…。

「進藤本因坊の碁に」

あぅ、そっちか…。
ビックリした…って、僕を何を考えてるんだ。

「アイツ「オレが碁でお前に勝ったら彼女になってもらう」って囲碁部入部して、私に啖呵を切ったんだけどさ…」

なんだか…懐かしいような気がするセリフだな。

「未だに1度も勝ったことないんだよ」

えっ!?

「アイツ、元プロ棋士の孫なのに碁の才能皆無なんだよね」

えっ!?
急な有坂 さん情報にビックリ。



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