「お前、何で復帰しないんたよ」
「今担当してる仕事を放りだす訳にはいかないし、突然止めたからそう簡単には戻れないよ」
父のお陰で棋院の関係者には納得きてもらってやめたけど、だからって、すぐ戻りますとはならないと思う。
「早く戻って来いよ」
しつこいけど、このまま戻ったら進藤の思うツボだしね。
●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●
「ちょっと!アンタ、プロの棋士だったってホントなの?」
昼休みに入った途端、日比野さんにグイグイ来られて後ずさってしまった。
「白スーツの人に色々聞かれたのよ。アンタがどんなふうに働いてるかとか…」
「私も聞かれたよ。倉田さんだったけ?あと他な棋士にも聞かれたけど
」
日比野さんの後に森田さんが続いた。
(遂に来たか……)
この棋戦の担当になった時から、いつかはバレると思ってたけど、思ってたより遅かった気もする。
「だからネットで調べたのよ!そしたらアンタ凄い人だったんじゃない」
日比野さん、相変わらずテンション高いな…。
「何でやめたのよ!あのツートン頭の男と何かあったんでしょ?初日に抱きつかれてたし」
「…………」
日比野さん、鋭い!!
日比野さんの予想を認めても認めなくても、色々大変だろうし…。
困ったな。
「ハイハイ、人の過去に首を突っ込む暇があったら、昼ご飯食べに行くよ」
どう応えようかと思ってたら、小林さんが日比野さんに声をかけてきた。
「ちょっと泰子、アンタ気にならないの?ツートン男こと気になってたくせに」
「私が気になってるのは男としてじゃなくて成績」
「何、それ?」
えっ?小林さんって、もしかして進藤のファン?
「塔矢はどうする?」
「今日なお弁当なんで」
一緒に昼ご飯食べたら色々聞かれて大変だったかも。
お弁当持ってきて良かったよ。
「さっさとしないと昼休み終わるよ」
そう言って、小林さんは日比野さんと森田さんを引っ張って行った。
お弁当を食べた後、この事を思わず進藤に電話で愚痴ったら…
「お前が何も言わずに休業するからだろ。皆心配してたんだからな」
と言われてしまった。
それは仰る通りで…。
今思うと皆に何も言わなかったのはまずかったかな…って思ったりするけど、進藤に居場所を知られたくなかったからね。
「皆、色々聞きたくても聞くわけにはいかないって我慢してたけど、スタッフと仲良くなってきたら我慢出来なったらしいぞ」
「そうなんだ…」
「というか…お前から連絡来るなんてな♪携帯番号入れといて良かったな♪」
なんて言われてしまい…そういえば今の携帯から進藤に電話した初めてだったことに気付いた。
進藤からは何度か電話がかかって来てたけど。
「あっ、塔矢、やっと見つけた」
進藤に電話してしまった自分に何だかなーと思っていると、小林さん会社に戻ってきた。
「どうしたんですか?」
「今日仕事終ったら家に来ない?お願いがあるんだ」
「えっ?」
小林さんが僕にお願いってなんだろう?
でも、今日も進藤が来ると思うんだよね。
だから断ろうと思ったんだけど…。
「進藤本因坊なら、有坂に捕まると思うから大丈夫じゃないかな」
えっ?
有坂さんに?どうして?
というか何で、進藤が家に来てること知ってるんですか?小林さん。