「おいっ!進藤!どうなってるんだ!」
「オレに聞かれても知るわけないじゃん」
塔矢を含めたスポンサーの関係者が部屋を出て行った後、緒方さんに胸倉を掴まれた。
「オレより緒方さんの方が知ってるんじゃないの?同じ門下だろ」
「何度も先生に聞いたが知らないの一点張りだ」
「オレもだよ」
「………!!」
オレの胸倉を掴む緒方さんの力が強くなってきた。
「ちょっと離してよ…」
「「緒方さんの落ち着いてください」」
伊角さんがオレを倉田さんが緒方さんを引き離してくれた。
(く…苦しかった)
「塔矢、なんで棋士やめたんだろう?」
倉田さんがポツリと呟いた。
そんなの囲碁関係者全員が知りたいことだと思う。
オレも知りたい。
「進藤がアキラ君に何かしたに決まってるだろ」
「前にも言ったけど何もしてないって」
「進藤が気付いてないだけで、絶対何かやからしてる筈だ。お前が絡むとアキラ君が可笑しな行動を取るからな」
和谷や伊角さん、和谷や倉田さんまでウンウンと力一杯頷いてるんだけど…なんでだよ。
「それにお前が何かしてるから怒ってるから、あからさまに初対面みたいな態度してただろう?」
そう言われても…オレ、ホントに何もしてない。
だから、何であんな初対面みたいな態度取られたのか全く解らないけど…。
(何もしてないよな?)
あそこまで、やられると不安になりそう。
「よし、メシ食いに行くぞ。そこでアキラ君に何かしてないか、じっくり聞いてやる」
「そんな…。ちょっと待ってよ」
倉田さんが断ってくれたら、食い物ベに釣られてホイホイついていくから、断れなくなったじゃんか。
倉田さんのバカッ!
「ああ、倉田、お前の分は自分で払えよ」
「えっ?奢りじゃないの?」
「当たり前だ。お前の食べる量は半端じゃないからな」
「ケチ…」
そんな訳で、オレは強制的に連行された。
「アキラ君がいないと塔矢門下の研究会は華がないんだ。わかるか…」
は~あ…。
塔矢がいなくなってから酔った緒方さんに絡まれることが多いんだよな。
あっ、佐為がいた時から絡まれてたような?あれ?
「だから何としてもアキラ君を棋士に戻せ」
言われなくてもそうしたい。
塔矢がいない毎日は淋しいし、オレは塔矢が好きだから。