ONE MORE TIME 06
(アキラサイド)

「塔矢っっっ!!!」
「えっ………」

突然進藤に抱きつかれてバランスを崩して後ろに倒れかけた。
よく耐えたよ…危なかった…。

進藤がどんなリアクションしてくるかな?と不安だったんだけど、まさか抱きついてくるなんて予想外だった。

「…離してください」
「ああ…ごめん…。つい…大丈夫か?」

ついって…。
相変わらず勢いだけで周り見てないのか。キミは!
タイトル保持者で今や囲碁界の顔なんだから、軽率な行動は控えろとあれ程言ったのに忘れたのか!

「大丈夫です。ご自分の立場を考えて行動された方が良いと思いますよ」

プロをやめた僕に進藤がどうなろうともう関係ないけど、やっぱり気になるからら忠告しておこう。

「そんなことより、お前、今までどこにいたんだよ」
「誰かと勘違いしてませんか?私と進藤さんは初対面な筈ですが」
「初対面って……」

僕の言葉に進藤が固まってる。
初対面扱いされたのがショックだったのか?
僕が進藤の担当に決まった時から、どう進藤に接しようか悩んだ結果、進藤に初対面のように振る舞うことにしたんだよね。
棋戦が終ったら進藤とは会わないしね。
「棋戦に関することしかお答え出来ませんので」
「………」

進藤が僕から離れた後に気付いてたけど、緒方さんや倉田さん、社や和谷君、伊角さんも、驚いた顔で僕を見てた。
緒方さんにも何も言ってないから申し訳ないとは思うけど、緒方さんに言ったら進藤にバレそうだから。

(ごめんなさい。緒方さん)

僕は何も言わずに顔合わせ会場を後後にした。





●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●





「ちょっと知り合いだったの?」

進藤達との顔合わせが終わって部屋を出た瞬間、日比野さんに尋ねられた。

(やっぱり、こうなるんだね…)

日比野さんに色々聞かれるだろうな…と予想してた。

「まさか、そんな訳ないでしょ」
「嘘?相手はアンタのこと知ってた感じだったけど?」

やっぱり日比野さんに隠すのは難しいかも。
でも、本当のことを言ったら益々ややこしくなりそうだから、初対面で貫き通そう。

「進藤さんと塔矢が知り合いかなんてどうでも良いじゃないか」
「えーっ、泰子は気にならないの?」
「ならないよ。人のプライベートに興味ないから、それよりも会社に戻るよ。まだ仕事が残ってるんだから」

「アンタも進藤って人の写真見てキャ゙ーつまて言ってたくせに、急にドライになっちゃって…」
「あ…それはそれ、これはこれだよ。それより日比野はミーハーすぎるのよ」

なんて言いながら、日比野さんと小林さんが歩く後ろを森田さんと僕が歩く。
小林さんのお陰で日比野の追求を逃れることが出来て助かった

(ありがとう。小林さん)

「あれは脈アリかもね。頑張って」

って、僕の後ろから有坂さんに小声言われたんだけど…。

どうこと?



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