棋戦のスポンサーになることが発表になった翌日の休憩中。
仲良くしてる女子グループ皆と昼食中。
昼休みに1人でいる所を、日比野さん森田さん小林さんに声をかけられて、昼食を食べないって話したら凄く驚かれて、気が付いたらグループに入っていた。
初めは女子トークなんてしたことなかったし、出掛けたこともなかったからおっかなビックリだったけけど、今は慣れて仲良くやってる…と思う。
「うちみたいなお和菓子メーカーが囲碁大会のスポンサーだなんてね」
「広告に出てもらう棋士には、うちから担当が1人ずつ付くらしいわよ」
「へーそうなんだ」
出来れば担当になりたくない。
誰の担当になっても僕の素性がバレるから。
裏方をやりたい。
「でも囲碁なんてお年寄りのゲームでしょ」
「それがそうでもないみたいよ。これ見てよ」
日比野さんが机に、この間発売になった進藤と和谷君、そして伊角さんの写真が載ってるファッション雑誌を広げた。
「キャー!!前髪金髪の子凄くイケメン!!この子もプロなの?」
小林さんが黄色い悲鳴を上げている。
「そうみたいよ」
「嘘〜」
「21才でほんいんぼうっていうのタイトル持ってるだって」
相変わらずカッコつけてるよね。カメラマンの指示かな?
(それにしても……)
カッコイイな/…///
………!
って、何を見惚れてるんだ!僕は…。
……………。
でも、会わなくなたった2年で随分格好良くなったよね。
彼女いるのかな?
「うわ〜彼女に立候補したいかも〜」
「私はこの茶髪の子が好みかも」
「私は黒髪の子がいいな。落ち着いてそうだし」
日比野さは好みは和谷君で森田さん好みは伊角さん。
で……
小林さんの好みが進藤…。
また進藤のファンが増えてる。
囲碁界にとっては良いことかもしれないけど、僕はちょっと複雑かな。
まあ、プロを止めてしまった僕には何も言うことはないけど。
「しかも、タイトルの賞金が凄いらしいわよ」
「それってもしかして優良物件?」
確かに優良物件かもしれませんが、プロ棋士の奥さんは色々大変ですよ。
「塔矢さんはこの3人の中で誰が好み?」
「えっ?何か」
「だから、この写真の3人の中で誰が好みかって聞いてるの」
それは勿論進藤なんだけど、そんなこと言ったら、話がややこしくなりそうだから言わないでおこう。
「別に誰も…」
「えーっ!なんで?こんなにイケメンなのに」
「塔矢さん彼氏居なかったわよね?」
「……まあ」
「勿体ない!そんなに美人なのに勿体ない!この3人うちの誰かの担当になるかもしれないんだから口説いちゃいなさい」
「なっ、何を言い出すんですか!ちゃんと仕事しましょう」
日比野さんの発言が信じられなくて、無駄だと解っていても反論してしまった。
元々僕と違って仕事より恋愛って人なんだよね。
「当然するわよ。でも恋愛もしなきゃ。という訳で合コンやるわよ!」
(…………………)
どうしてそうなる?というかやっぱりそうなるのか。
色々言われたくなくて、居ないことにしたのに効果はあまりなかった…。
(強制参加確定だろうな…)
今までは僕の素性がバレることはなかったけど、何度も続けてたら確率上がるから参加したくないのが本音だ。
ちょっと憂鬱な気分で仕事をしていた午後。
広告に出演してもらう棋士に付く担当者が発表された。
「塔矢さんは進藤本因坊の担当ね」
どうしてこうなるんだ?