「おめでとう、いらっしゃい…ヒカルさん。さあ着替えるわよ」
「へっ?」
オレは初詣に行くために、アキラを迎えに来ただけなんですけど、何故か家にあげられて、あれよあれよという間に、明子さんに案内されてる…。
(嫌な予感?)
諦めたような顔のアキラを見ると、嫌な予感しかしない。
明子さんが、とても笑顔で張り切ってる感じの時は、何か企んでるんだよな。
「見て、ヒカルさんに着てほしくて買ったの」
「………っっ!!」
部屋に通されて見たものは、女物の着物だった。
(買ったのって、それをオレに着ろって言うのかよ…)
アキラの諦めた顔はこのせいかっ!
「ヒカルさんと初詣に行くってアキラさんから聞いてね…」
なんてことしてくれたんだよ…と目で訴えると、申し訳ない…という顔でオレを見てくるアキラ。
「行くなら近衛光としてでしょ、だから思わず買っちゃったの。ちなみにアキラさんのも新しい着物よ」
いや、初詣は進藤ヒカルとして行くつもりだったんですけど…,。
(オレもたまには男の姿で歩きたいし…)
夢の為に頑張ってるとはいえ、正月ぐらいは男に戻って外を歩いても許されるだろうと思ったんだけど、明子さんは許してくれないらしい。
「進藤君…諦めなさい…」
「はあ…」
オレの肩を叩く先生の顔を見ると、先生も諦めたような顔だった。
ちなみに、オレに着物を着せる為に、緒方さん達の新年の挨拶を明日に変更させたとか…。
凄いよな…そこまでするか。
(今年も…いや、これからも明子さんには逆らってはいけない)
オレは心に誓った…。
そして、明子さんに操られはまま着物を着させられた…。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「あ~歩きにくい…」
当然だけど、女物の着物に悪戦苦闘なオレ。
あっ、明子さんに笑顔で見送られ、アキラと2人で初詣に向かってます。
「少しは僕の気持ちが解ったたろ、もう見たいとか軽く言わないでほしいな」
アキラの和服姿がキレイだから、見たいっ!…ってお願いしまくってたオレは、ちょっと反省。
よくこんなの着て、普通に歩けて過ごせるよな。
だけどさ…こんなことになったのも…。
「お前が口を滑らすからだろ」
「それは…ゴメン…」
「でも、お前和服嫌いじゃないだろ?」
「…好きだけどね。着付けが大変だし疲れるから洋服の方が楽かな」
お母さんが張り切るし…って言って苦笑いするアキラ。
「ハハハハハ…」
オレもさっき餌食になったけど…ホントにアレは凄かった…。
「ところで、今年は何をお願いするんだ?」
「君が無事に条件をクリアしてプロになれますように」
「オレと結婚出来ますように…は?」
「/////…」
おっ、赤くなったっ!可愛い!
「ふふふふふざけるな~っ!条件クリアしてプロになるのが先だ!パレそうなことが何度かあっただろっ!危なっかしいんだ!君は…」
怒ったアキラも可愛いな…。
…ってことはおいといて、アキラの言う通り、パレそうなったことが何度かあった。
楽しいこともあったけど、今までホント…色々あったな…。
母さんの襲撃。
修学旅行。
じいちゃん孝行。
などなど…。
その時のことは、機会があれば話そうかな。
さてと、今はそれよりも初詣が終わったら着替えてアキラとデートだ。
端からみたら女同士で買い物したり、食事してるようにしか見えないから、色々便利なんだよなw
(アキラは人気者だから、デートは大変なこともあるからさ)
早く同じ所に立てるように頑張ろう。