…と思ったのは甘かったのか、スケジュールの関係で暫く登校出来ない…。
心配でメールしても「大丈夫!」と、素っ気ない返事が帰ってくるだけ。
あと「アキラの手料理が食べたい」とか…。
……嬉しいけど…恥ずかしい。
「アキラと一緒に居放題vv女に化けるのも悪くないなvv」
僕の心配を他所にヘラヘラと能天気に言いはなった時に、思わず「ふざけるな~~っ!」って怒鳴ったのは、きっと許される筈だ。
ヒカルのことが解決するまで仕事をセーブしようと心に誓いながら、ようやく登校してみたら…クラスにも囲碁部にも溶け込んでいるヒカルがいて、囲碁部でも女子生徒に囲まれていて…なんかムカついた。
「近衛さんの髪って地毛なんでしょ」
前髪だけね。
「近衛さんてハーフってホント?」
それは、お母さんが考えた設定だよ。
ヒカルはハーフで、海外に住んでいて帰国して海王高校に編入してきた。
…ていう設定になってるらしい。
「近衛さんって、塔矢さん並みに強いよね」
「いや、もしかして塔矢さんより強い?」
ヒカルが強いのは当然だよ。
僕のライバルだからね。
でも、僕より強いという意見には納得出来ないな。
あ~~~!!
僕がどれだけ心配してると思ってるんだ!
なのに君は女子達にデレデレと…。
僕と打つ時間が減るだろ!
あ~~~もう我慢出来ない!
「近衛さんっ!」
「えっ?ちょっと…」
僕はヒカルを引っ張って、屋上まで連れ出した。
部員達がざわついてるみたいだけど、そんなの知らない。
「なんだよ!いきなり…」
「女の子前でデレデレして!」
「デレデレ…って、オレは今女なんだから女と親しくしない方が可笑しいだろ」
「………」
……そうなんだけと…そうなんだけど…ヒカルが他の女性と仲良くしてるのを見ると腹がたつんだよ。
「ふ~ん…もしかして…アキラちゃん、ヤキモチ焼いてるとか」
ビクッ!
「あっ、図星か」
ヒカルが意地悪そうに笑っている。
「~~~~~」
僕は、恥ずかしさで頭に血が昇る。
多分、今僕の顔は湯気が出そうなくらい真っ赤だと思う。
「アキラのヤキモチなんて、良いもん見れたっ!」
とても嬉しそうなヒカル。
ヒカルを喜ばせるのは悔しいけど……。
しょうがないだろ!
腹が立つのは立つんだから…。
それもこれも、ヒカルが僕を半年も1人にしたのがいけないんだよ!
僕は少しでも長くヒカルと一緒にいたい……。
「それはともかく…」
ヒカルが急にドキッとなるような真面目な顔…男の顔になった。
「オレは絶対プロになるから、心配だろうけど損じて待ってて」
「ヒカル…」
「それにさ、お前と同じ高校ってのも心強いんだぜ。だからこれからもよろしくな」
「プロ試験に落ちるとは考えないんだ」
「当然!」
プロ志望者が聞いたら怒りそうな発言だね。
「てな訳でさ…今日の晩飯よろしくな!」
「えっ?」
「いや~お前が来てくれない間、カップラーメンばっか食っててさ…」
「………」
ヒカルの家に一歩踏み入れた僕は、ヒカルに向かって盛大に怒鳴った後、掃除、洗濯、夕飯作りをすることになった…。
ヒカルに家事を叩き込むべきだろうか?