METAMORPHOS 02
(ヒカルサイド)

「仮にも女性のふりしてるなら、ちゃんと片付けたらどうだ」

家に来るなり部屋の片付けを始めたアキラ。

「外で気を張ってるから、家でなにやる気にならないんだよ~」

オレの愚痴に反応することなく、テキパキと片付けてくれる。
手際が良いよな…。
片付けが終わると晩飯まで作ってくれちゃって、アキラの手料理なんて最高!

「アキラ~~」

嬉しすぎて、アキラに抱きつくオレ。
よく考えたらアキラに触れるのも久し振りだ。

「ちよ…ヒカル…」

ーピンポーンー

(くそっ、良い雰囲気だったのに邪魔するなよっ!)

心で文句を言いながら、ドアを開けると…明子さんがいた。

「ヒカルさん…洋服とウィッグ届けにきましたよ」
「ありがとうございます」

オレが普段使う服やウィッグ等は、明子さんが定期的に届けてくれてる。

「まあ、アキラさん。あらあら、もうバレちゃったの?残念ね」

「囲碁部に行ったら、アキラがいて…もうバレるなって思いましたよ」
「アキラさんが相手なら仕方ないわね」

部屋にアキラがいるだけでバレたことに気付いて、それでも落ち着いている明子さんは凄い。

「お母さん知ってたんですか?」

声のトーンから怒ってるのが解る。
怒られるのを覚悟で話すしかない。

「協力者、明子さんと塔矢先生だから」

オレのカミングアウトの後、明子さんが説明を続けてくれた。

「私ね…特殊メイクの勉強してたのだけど、卒業してすぐ行洋さんと結婚したから披露するチャンスがなかったの」

思いがけず披露出来て嬉しいわ~と嬉しそうに話す明子さん。

「そこじゃなくて…いやそこもだけど、どうしてお母さんが協力することになったんですか?」
「ああ…それはな…」

オレと明子さんは、こうなった経緯をアキラに話した。





●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇





それは、塔矢先生と打っていた時のこと。

「ありません…」

当たり前だけど、先生にはまだまだかなわないな…。

「強くなったね…進藤君。佐為も喜んでるよ」
「だと良いんですけど…」

先生とアキラには佐為のことを話してある。
佐為が消えて寂しくて思わず、アキラと先生には佐為のことを話してしまった。
信じてもらえないかと思ったけど、2人とも信じてくれて「佐為の為にも打ち続けるべきだ」と励ましてくれて、碁を続けることを決意した。
佐為が憑りついてた時から、プロになることを母さんも父さんも大反対だけどな。
いつまで経っても諦めないオレに痺れを切らせて親父が、とんでもない条件を出してきた。

「ご両親への説得はどうかね?」
「それが…」

親父達が出してきたプロ入りの条件を話に塔矢先生に話した。

「それは困ったね…」

こんな条件はさすがにクリア出来ないよな。
親父達はどうして、あんなに碁が嫌いなんだ?

「塔矢の力を使えば、なんとかなりますよ」
「えっ?」

先生に話終わる頃、明子さんが部屋に入ってきてニコニコしながら言い放った。

「ヒカルさんが女性になるのは、私がなんとかしますわ。まさかこんな所で、あれが役に立つなんて…嬉しいわ」
「明子…」
「学校は行洋さんお願いしますね」
「……解った…」

明子さんの言葉で、あれよあれよという間に、近衛光して生活する基盤が整えられた。

(塔矢先生…明子さんに頭上がらないんだな…)

恐るべし!塔矢家…というか明子さん。

絶対不可能だろうとタカを括って出した条件をオレが受けたもんだから、しっかり女になって条件受けると宣言した時、親父達は卒倒してたっけ。






●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇






「僕だけ知らなかったのか…」

明子さんが帰った後、アキラがポソッと言った。

「しかもお父さんと打ってたなんて…」

アキラは怖い…。
これは完全に怒ってるな。

「あ~~~海王に入れるか解らなかったし、ほら、お前も北斗杯とかで忙しいそうだったから、心配させたら悪いかな…と思ってさ」
「僕達は付き合ってるんだったよね?」

うん。
オレとアキラはお付き合いしてたりする。
しかも塔矢家公認で。
あっ、囲碁関係者は誰も知らない。

「なのに僕に知らせてくれないなんて…」

試験勉強てや化ける為の特訓で一杯一杯だったからアキラに会えてなかったからな…。
相当我慢させてたみたいだな。
それにしても…。

(可愛いな…)

今にも泣き出しそうなアキラを見て、そんなことを思うオレ。
目に一杯涙を溜めて泣きそうなアキラなんて、滅多に見れないもんな。

「悪かったよ…。1年間乗り気って絶対プロになるから」
「当たり前だ」
「プロになったら、今度はアキラを嫁にもらうから」
「うん…」

アキラにオレだとバレてることが親父達にしれたら不味いけど、オレにとっては心強い味方が出来た。
親父にバレてることを知られなければ大丈夫だろうし…。

(女同士ってことで部屋に来ても不自然じゃないから、イチャイチャし放題だし…)

考えてみると美味しい環境だよな。
でも、アキラと過ごせるのが嬉しすぎて、ボロを出さないように気をつなないとな。

1年頑張るぞ!

(さあ、明子さんに邪魔されたことの続きだ!)

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