キミが好きだった… 01
(アキラサイド)

「俺、結婚するんだ」
 僕が名人位を獲得した後、いつものように2人で打っていた時、突然進藤が言った。
「えっ…」
 その言葉を聞いた時、僕の頭は真っ白になった。
 
 まるで、天国から地獄に突き落とされた気分だ。
 …僕は進藤が好き。
 でもライバルとしての関係を壊すのが怖くて、何も言えなかったんだ。
 碁が全てて生きてきた僕はどうすればいいのか解らなかったし、2人で打つこの時間さえあればいいと思ってたから。
 でも、実際『結婚する』と言われると辛いな…。
 それでも僕は進藤に祝福の言葉を贈る。親友として。


 けれど、結婚を境に公式戦以外で進藤と打てなくなった時、僕はどれほど進藤を好きだったのか、そして自分がどれほど精神的に弱い人間なのか思い知らされることになった。







「名人位を獲得したばかりだというのに、どうしたんだ?」



僕は今連敗している。
名人を取ったばかりの連敗劇は、囲碁界での恰好の話題になっていた。
僕をよく思っていなかった人達からは「いい気味だ」と思われてるみたいだけど。
僕が疎まれていたのは知ってたけど、まさかここまでとは…正直驚いたな…。
でも、本気で僕のことを心配してくれる人もいる。
 その中に進藤もいた。

「どうしたんだよ?塔矢」

…君がそれを言うのか?進藤。
僕の不調の原因が自分にあるなんて、君は考えてもいないだろうな。
君に失恋しただけで精神のバランスが崩れるなんで、想いもしなかった。
そして、立ち直るきっかけも掴めないまま日々は過ぎていく…。

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