…と思ったけど、まだ実行出来てない。
今日も塔矢さんに言われるまま打つだけ。
誘っても「碁以外のことは興味ない」って断られそうだし。
塔矢さんは塔矢先生の娘だからな…。
オレを追いかけ回してる姿を見てたら、親子だな~って思うわ。
佐為を追いかけてた塔矢先生も、塔矢さんよりは静かだったけど、あんな感じだった…。
(……最近、プライベートは殆ど塔矢さんと打ってるから、新しい彼女を作る暇もないんだよな…)
大学もバイト先も、塔矢さんに知られたから逃げられなくなったし、大学では塔矢さんとオレが付き合ってることになってて、女の子も寄って来なくなったし…。
否定しても信じてくれない…。
女の子達曰く「あんなキレイな人が相手だと太刀打ち出来ない」だそうで…。
こうなったら、塔矢さんを誘って責任取って貰おうと思ったのに、言い出せないなんて情けない話だ。
(そういえば…塔矢さんがオレの前に現れる時って、いつもスーツだよな…)
しかもスカートじゃなくてズボン。
プライベートの時もあるはずなのに何で?
スーツも似合ってカッコいいから良いけど、あれだけキレイだから、可愛い系の服とか似合うと思うんだけどな。
(……………)
ヤバい…。想像したら実物見たくなってきた。
でも、断られそうだしな…。
どうしよう…。
(あっ!)
対局を条件にお願いしたら良いんだ。
塔矢さんはオレと打ちたい訳だから「もう打たない」って言ったら、きっと聞いてくれる。
よしっ!そうと決まれば即実行。
と言いつつ、最初は普通に頼んでみたら、やっぱり断れそうになったから「打たない」と言ってみることにした。
「これからもオレと打ちたかったら、スカート姿見せてよ♪」
「何!?」
「見せてくれないんだったら、もう塔矢さんとは打たないよ」
あっ、塔矢さんの手が止まった。
「しししし進藤~っ!それは僕への脅しか?」
「さあ、どうかな~?」
脅してるつもりはない…って、こういうの脅しだよな。
もし着てくれなくても、塔矢さんと打つのを止めたりしないけよ。
初めは物凄い勢いビックリしたけど、今は塔矢さんと打つの楽しいし。
彼女を作る時間削って打ってるから、ご褒美くださいってことで…。
(まあ、あんまり期待しないほうが良いかもな)
と、叶わない覚悟をして次の待ち合わせの日、塔矢さんを待っていたら…。
(~~~~~っっっ!!)
塔矢さんがワンピースを着て現れた。
オレのお願い聞いてくれたんだ。
……でも、それって何があってもオレと打ちたいってことだよな…。
解ってたけど…何か複雑…。
でも、塔矢さんキレイだから許す!
ホントッ、塔矢さんっっ!キレイッ!……というか…可愛い~~。
美人だしスタイル良いから、シンプルなワンピースで十分なんだよな~。
「スゲー似合うよっ!…塔矢さん」
と、言いながら心の中では…。
(やべぇ~鼻血出そう…)
と、興奮してたオレ。
これから塔矢さんと打つのに集中出来るかな?
自信ないぞ…。
でも、不甲斐ない碁を打ったら「ふざけるな~~っっ!!」って怒鳴られるから頑張らないと。
「…どうした?進藤」
「えっ…あっ…何でもないです…」
ヤバい…。
油断したら塔矢さんに見とれちゃう。
………………
……………
…………
………
……
(キレイだな~~)
オレ、塔矢さんに惚れたかも。
いや…待てよ。
もしかしたら「打つぞ!」のパワーに押されて気付いてなかっただけで、初めて会った時に既に惚れてたのかもしれない。
一目惚れ…?
うわ~~~どうするよ…オレ?