初恋 11
(アキラサイド)

「塔矢さん…今日も可愛いっっ!!」
「……////」

最近の進藤は、僕と会うと一言目にこう言ってくる。

(25才の僕に可愛いって…)

何だか恥ずかしい…。

「あっ、あんな感じの服も塔矢さんに似合いそう…」

洋服屋の前で突然立ち止まって、進藤がこんなことを言い出すことも増えた。

「あんな可愛い服、似合わないと思う…」
「えーっ、そんなことないよ~」

初めてスカート姿を見たいって言われた時も、こんな会話をしたような気がするけど、あれから益々何度酷くなって、何度も繰り返してる。
絶対、こんな可愛い感じの服は似合わないと思うんだけど…進藤も諦めが悪いな。

(僕のことを可愛いなんて言うのは、進藤ぐらいだよ)

でも、進藤に言われると嬉しいな。
お世辞ではなくて本心だと思えるからかな?
あと…。
進藤といると、なんだかとても楽しいんだよね。



それから変わったことと言えば他にもあって、碁会所に行く前に進藤と食事に行くようになった。

会って直ぐに…。

「塔矢さん可愛い」

とか…。

「腹減った~」

しか言わないからね…。
僕としては、早く碁会所に行きたい。

「………」

場所は殆ど、進藤がバイトしているファーストフード系列店なんだけど、進藤の食べっぷりを見ているうちに僕は唯々唖然となる。

「塔矢さん…食べないの?注文の仕方解らなかったらオレがやしようか?」
「大丈夫だよ。お腹空いてないからコーヒーだけで十分だ」

初めて注文する時は訳が解らなくて困ったけど、もう覚えたから1人で注文出来るよ。
進藤の食べっぷりを見てたら、食欲が失くなるだけだ。

(よくそんなに入るな…)

あんな脂っこいものばかり食べて大丈夫なんだろうか?
僕と会う時は、いつも大きいハンバーガーのセット食べてるよね?
進藤の食生活が心配になるよ…。






●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇






「あ~~ここでミスった~」
「ここはノビの方が良かったね」
「そういう塔矢さんは、ここ打ち込み過ぎ」
「…荒らさないと勝てないだろ」
「それで、死んでたら意味ないじゃん」
「進藤だって、ここで見損じて黒地が全滅してるだろ?これが君の敗因だね」

碁会所に来て即始めた対局は、危なかったけど僕が勝った。

「あ~悔しいな~」
「もう1局打つ?」
「おう!今度は負けないぜ」

僕と打つのが嫌で、逃げてた男の態度とは思えないね。
僕も進藤と打つのは、本当に楽しい。
進藤がプロではないのが惜しいけど、お陰で僕が独り占め出来てるから良いかもしれない。

「アキラ君が、こんなに熱くなって検討してるなんて初めてみたかも♪」

僕達にお茶を運んで来た市河さんが、なんだかとても楽しそうなんだけど…何故?

というか…僕、そんなに熱くなってたかな?

「進藤君、アキラ君って超鈍感だから大変だと思うけど頑張ってね♪」
「っ!ゴホッ…ゴホッ…」

市河さんが話終わると同時に、進藤が飲んでたお茶で噎せた。

「応援してるから♪」

えっ?応援って何の応援なんですか?市河さん。
それから僕が鈍感だなんて、どういうことですか?
進藤は解ってるみたいだけど…。
一体…どういうことなんだ?

Continue!




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