今日も私は佐為と打っている。
打ちながら話題に出るのは、アキラと進藤君のこと。
「アキラは元気よくヒカルを追いか…コホン…ヒカルに打ってもらえて、戦績も良いようですね」
言葉を飲み込んだようだが…佐為、本音が声に出ているよ。
「毎日楽しそうに家を出ていくよ。まさかアキラがあんなに行動的だとは…」
「あなたの娘ですからねぇ」
「………」
嫌味な笑みを浮かべる佐為に、私は返す言葉がない。
佐為と初めて打った後、もう1度打ちたくて探偵に頼んで佐為を探して貰ったのだ。
「あの時は本当に驚いたんですよ」
玄関に立つ私を見た時の佐為の驚いた顔は、一生忘れないだろう。
「バイト先に突然現れて驚いたようですが、なんだかんだ言っても、ヒカルも棋力が同じぐらいの相手と打てて楽しいのですよ」
アキラの碁のことになると、行動力が上がる所は私に似たのだな。
そして、文句を言いながら打ってくれる進藤君も、師匠の佐為に似たのだろう。
「全て佐為のお陰だよ」
アキラがあんなに生き生きするのなら、もっと早くに2人を会わせればよかったかもしれないと思うが、進藤君のことを10年前から知ってるとアキラに知れたら、怒られるかもしれないな。
「ホントに良いんですか?」
「なにがだね?」
「ヒカルでよかったんでしょうか…」
「薦めておいて、今さらなにを言う」
「確かにそうなんですが、真面目なアキラがヒカルの性格についていけるのか?…とか、恋愛関係になったら、結婚まで早い予感がするんですよ」
「……アキラが良いなら、私は構わない」
佐為の心配ももっともだが、棋力から見ても、アキラが夫として認めるのは進藤君だけだろう。
「ただ…」
「ただ?」
「アキラと結婚するなら、進藤君がプロになるのが条件だ」
きっとアキラも進藤君がプロになることを望むだろう。
進藤君のような素晴らしい才能を、アマで眠らせておくのは勿体ない。
佐為に続き進藤君までプロにならなければ、日本の囲碁界にとって損害だ。
私の出した条件に、佐為は笑っていた。
2人のことは黙って見守ることにする。