「佐為!なんなんだよ!あれは!」
「あれとは、なんですか?ヒカル」
「塔矢アキラだよっ!」
「ああ…」
「ああ…じゃないぜ!お前が打てって言ったから打ったら大変なことになってるんだぜ」
ヒカルが泣き付い来て詳しく話聞いてみると、アキラがヒカルのバイト先に現れては、打てと、せがまれているそうな。
年が近くて棋力も同レベルのヒカルと出会って、打ちたくて打ちたくて仕方ないのでしょう。
(強い碁打ちを見つけると、見境がなくなるのは流石親子ですね)
10年前、初めてネット碁で行洋と対局した後、私の家を突き止めて訪ねて来た時を思い出しますよ。
「バイト先にまで押し掛けられるなんて、ヒカルも大変ですねぇ……」
「……お前、面白がってるだろ?」
「そそんなことは…ないですよ…」
「どうだか…」
私を睨むヒカル…。
…けっして楽しんではいませんよ。
普段、大人なしくて人当たりの良さそうに見えるアキラが、そこまで必死になってるなんて見てみたいな…と思っただけで。
「それはともかく、ヒカルもアキラと対局出来て楽しかったんじゃありません?」
ヒカルもアキラ同様、年が近くて棋力が同じレベルの打ち手なんていませんでしたから。
「そそりゃそうだけとさ…」
ほらやっぱり。
「だったら打ってあげたら良いじゃないですか」
「でもさ…バイト先に何回も来られるから、先輩達に彼女だと勘違いされて大変なんだよ」
たとえ勘違いでも、あんなに美人なアキラが彼女だなんて幸せですよ。
「別に良いじゃないですか間違えられても。ヒカル、今フリーですし」
「悪かったな…」
「この間、大学の後輩に見事に振られてませんでしたっけ」
振られた後、しばらく機嫌が悪かったですもんね~。
「……………」
うわ~ホントのこと言っただけなのに、そんなに睨まないでくださいよ~。
ヒカルは見た目は今時の感じで良い出来なんですが中身がね…。
付き合っているショックを受けて、去っていく女性が多いようで…。
ヒカルはとても良い子なんですが、見た目が良過ぎるせいなのか中身にも期待する女性が多いみたいで、ヒカルの恋愛は長続きしないんですよね。
「だから、アキラが彼女でも問題ないと思いますよ。アキラは碁以外のことは疎いので、ヒカルでも長続きするかもしれませんし」
「オレでもって、どういう意味だよ」
ハハハハハ…。
「てかオレ、あんな押しの強い女嫌いだ」
確かに…ヒカルは可愛い子が好みですらね…。
「ままあ、碁を離れると、とっても可愛い娘なんですよ」
「信じられるかよ…」
「騙されたと思って付き合ってみるのもアリだと思いますよ」
上手くいけば、ヒカルにとってもアキラにとっても良いと思うんですよね。
きっと、お似合いだと思いますし、ヒカルにとってはプロになるチャンスが生ませるかもしれませんし。
頑張ってくださいね…ヒカル。