今日もスマイル全開でバイト中。
「いらっ……」
「見つけたぞっ!進藤ヒカル」
「えっ?」
と塔矢アキラ…。
ななんで、ここに?
「進藤ヒカル、今から打とう」
塔矢さん…オレをカウンターから引っ張り出す感じの勢いで、肩を引っ張ってくる。
ちょちょっと待ってよ!
「バイト中なんだから無理に決まってるだろ」
「それなら終わるで待ってる」
「あと5時間は終わらないですよ」
「平気だ」
マジ…?
持ち時間5時間の対局があるから慣れてるのか?
…って、そんなことはともかくホントに待つ気かよ。
だも、まあ、待てなくて諦めて帰るよな。
と思ってたんだけどさ……
………………………
……………………
…………………
………………
……………
…………
………
……
バイトが終わるまで塔矢さんは、帰らず店の前でオレを待っていた。
マジかよ…。
ゲンナリしてしまうオレ。
「さあ、打とう」
「でもこの時間だと、碁会所に長くは」
「父の碁会所なら大丈夫た」
あ……ソウデスネ。
塔矢先生の碁会所なら大丈夫だよね…。
「わかったよ!打てば良いんだろっ!」
「よしっ行こう」
気持ちでは塔矢さんに引きずられるような感じで、塔矢さんの後ろを歩く。
そして、碁会所に着くなり直ぐ対局を始めた。
佐為に言われて無理矢理打たされたけと、打ってみるとやっぱり楽しいんだよな。
今までは、佐為とじーちゃんと打つことが多かったから、実力がほぼ同格の塔矢さんと打つのは楽しくてワクワクする。
「…………」
「~~~~~~っっっ!!」
…と思いながら、打ってたら………また勝っちゃったよ~~。
(……塔矢さんの気迫が怖い)
オレのバカッ!これ以上燃え上がられてどうするんだよ~~。
「どうして、君はプロにならないだ?」
「面倒だから」
「なんだ?それは!」
うわ~~そんな怖い顔して怒鳴らなくても…。
「だってオレの親、碁を全く知らないせいかプロになるの反対だったし、説得してまでなろうと思わなかったし」
説得するのが面倒臭かったし…。
「勿体ない!プロ並みに打てるのに」
「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、オレはプロにはならないから」
塔矢さんと打つのも楽しかったけど、佐為と打ってるだけで楽しいしな。
「僕は諦めない!絶対君に『プロになる』と言わせてみせる!」
凄い迫力で宣言する塔矢さん。
「…………」
塔矢さんって見た目と中身が全然違う~~!!
詐欺だ~~。