初恋 03
(アキラサイド)

進藤ヒカル……。
彼は一体誰なんだ?

あれから何度棋譜を並べて検討しても、只々彼の凄さを痛感する。

あれだけの実力なら大会に出てるだろうと思って、棋院やネットでアマの大会のデータを調べたけど、進藤ヒカルの名前はなかった。

自分で言うのもなんだけど、女流タイトル総なめで他のタイトルにもリーグ入りしている僕に中押しで勝つほどの彼が、全く大会に出てないなんて不思議だ。
1つくらいは出ていても良いのに。

そういえば、お父さんに進藤ヒカルと打つように言われたんだった。

(お父さんなら、なにか知ってるかも?)

そう思った僕は、お父さんの部屋に向かった。






「お父さんっ!」
「な…なんだね」
「進藤ヒカルについて教えてください」
「そう言われても、私も知らないのだよ」
「そんな筈ありませんっ!進藤ヒカルと打てと言ったのはお父さんですよ」
「……いいや…知り合いに、アキラと打たせてほしい…と言われただけだ…」

なんだか……怪しい……。
怪しいけど、お父さんは口が固いから、詰め寄っても話してくれないだろう。
僕は諦めて、お父さんの部屋を後にした。
絶対教えてもらいますから!






その後…。
出版部の天野さんや緒方さん、芦原さんに尋ねても知らないと言われた。

(あれだけの碁打ちなのに、棋院関係者が知らないなんて…)

棋院からの帰り道、ふと目を向けたファーストフード店で、制服を着て働く彼を見つけた。

(あれはっ?!)

こんな近くにいたなんて!


「いらっ……」
「見つけたぞっ!進藤ヒカル」
「えっ?」

絶対、もう1度打ってもらうぞ!


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