「おめでとうございます」
は?何がめでたいんだ?
…と思っていたら、次の言葉に僕は固まることになった。
「妊娠してますね」
…………………………
えっ?
にににに妊娠!?
僕が?
妊娠するようなことをした覚えはないのにどうして?
体調不良が長引いてるから、大事なタイトル戦の前に念のために診てもらっておこうと軽い気持ちで受診したら、予想してなかった妊娠って…。
病院を出た後も、混乱した頭で必死に数ヶ月の自分の行動を思い出していた。
……………
そういえば…
目が覚めたら進藤のマンションだったってことがあったけど。
……………
まさか…まさか…まさか…
子供の父親は進藤?!
でも本当に寝てただけだったら?
……………
ここで悩んでてもしょうがない。進藤に直接聞こう。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「妊娠した」
どう話を切り出して良いのか迷ったから、もう単刀直入に言ってみた。
「へっ?」
進藤の表情が一瞬固まった。
まあそうなるよね。
僕もそうな感じになったし。
「マジで?」
「ああ」
僕が頷くと同時に進藤が物凄い勢いで土下座した。
「ごめんっ!」
謝る進藤を見て、僕は彼が子供の父親はだと悟った。
「好きな奴に迫られて我慢出来ませんでした!」
えっ?
僕が進藤に迫った?
僕がそんなことするわけ…ないと思うけど……全く覚えてない…。
…ん?それより今、進藤は何て言った?
進藤が僕を好き?
え?え?え?
そんな素振り全くなかったじゃないか。
だから、ずっと僕の片思いだと思ってたんだぞ。
「お前、あの日相当酔ってて家まで送って行こうと思ったら「オレの家で打つ~」って言って聞かないし、仕方なく家に連れて来たら迫ってくるしで大変だったんだからな」
説明してもらっても全く思い出せなない。
僕がそんな失態を犯してしてたなんて…。
恥ずかしい…。
「だからって自分を抑えられなかったオレが全面的に悪い訳だから、こうなったらもう腹括るしかないよな。って訳で塔矢」
「何?」
「オレと結婚してくださいっ!」
えっ?
「何言い出すんだっ!結婚って…そもそも僕と君は付き合ってないだろうっ!」
「そうだけど、塔矢をシングルマザーにするわけにはいかないだろ。そんなことしたら囲碁界にいられなくなりそうだし……オレが囲碁界いられなくなってもしょうがないけど、オレは塔矢と結婚して2人で育てたい」
「進藤……」
進藤の本気度が伝わって来る。
こんな真剣な顔、対局以外だと久し振りに見たかも。
(格好いい…)
…じゃなくてっ!
今は、進藤に見惚れてる場合ではないだろっ!
「でも、それだけのことをしたから、殴られる覚悟で先生に挨拶しないとな」
正直、お父さん達の反応が怖い。大丈夫かな?
「あ~~塔矢の誕生日に告白する予定だったのに~~オレのバカ~~~ッッ!!」
なんか突然叫んで悔しがってるし…。
僕が心配してるのに君は全く…。
さっきまでの格好良さは何処にいったんだ。
僕だって、まさか交際0日で結婚…しかも授かり婚をすることになるとは思ってなかったよ。
しかも、僕の誕生日間際に発覚だなんて。
そういえば、まだ進藤が好きなこと伝えてないけど、まあそのうちにね。