2004年、大晦日。
「だ・か・らっ!ツギだ」
「いや、ノビだっ!」
「そんな危なっかしい打ち方してるから、逆転されるんだろ」
「うるさいっ!」
バタンッ!
ヒカルが怒りに任せて乱暴に扉を閉める音が響いた。
(やってしまった…)
碁になると引くことの出来ない僕達。
特に僕が引けなくなるんだけど。
(初めて2人で過ごす大晦日なのに…)
僕とヒカルは、その…彼氏彼女の関係だったりする。
ヒカルが1人暮らしを始めて、初めての大晦日。
僕の両親も中国に行っていて留守。
そうなると、新年を一緒に過ごそうということになったんだけど、いつものように打って、いつもの大喧嘩になってしまった。
(はあ~~)
僕は碁石を片付けて、ヒカルが帰ってくるのを待った。
「ただいま」
「おかえり」
暫くしてヒカルが帰ってきた。
「ああ…その…悪かったな」
「僕の方こそ…」
「オレ達、碁に関してはルール決めないとダメだな」
「そうだね」
毎回、喧嘩になったらたまったものではない。
「まあ、それはこれから考えるとして、身体も冷えたし、一緒に風呂入ろ」
「へ?」
今、なんて言った?
僕とヒカルが一緒にお風呂?
冗談だろっ!
外で頭を冷やしすぎたのか。
「何を言い出すんだ!君は」
「良いじゃん…良いじゃん…風呂広いんだからさ」
そう言って、軽々と僕を抱き抱えるヒカル。
「ちょっと、待てーっ!」
この後、どうなったかなんて言わなくても解るよね?
という…僕の口から言わせないでくれ!
恥ずかしいしくて、顔から火が出そう…。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
翌日。
目が覚めて時間を認識した後、僕達はまた喧嘩になっていた。
「君が盛るからだろっ!」
「お前が可愛いのが悪い」
「/////…」
なななななんていう恥ずかしいことを言うんだ……。
万年盛りまくりの男は!!
恥ずかしすぎて、思わずヒカルに向かって思い切り枕を投げてやった。
「イテッ!」
枕はヒカルの顔に見事にヒット。
「初詣行くんだろ!さっさと準備しろ」
日付が変わる前に初詣に出掛ける筈が、ヒカルが盛ってあのまま盛り上がり…目が覚めたら朝だった。
この僕が、そっち方面ではヒカルに流されっぱなしだ。
驚いたことに流されることを悪く思ってない僕がいて…なんだか信じられない。
僕としたことが。
ヒカルはそっち方面で天性の素質でもあるんだろうか?
あっ、そんなことを考えてる場合じゃなかった。
頭を切り替えて、僕は家から持ってきた荷物を取り出した。
「進藤さんと初詣行く時に着てね」
お母さんが準備してくれた振袖。
別に着なくてもいいと思うけど、せっかく準備してくれたしね。
「どう?似合ってる?」
「…………」
「ヒカル……?」
返事がない……。
お~~~い。
ヒカルの目の前で手を振ってみる。
それから数秒後。
「メチャクチャ似合ってる!!!」
ヒカルは大興奮で僕に抱きついて来た。
崩れるから止めてくれ。
着物は気付けが大変なんだ。
興奮状態のヒカルを宥めて、僕達は初詣に出掛けた。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
初詣で帰り道、僕はヒカルに聞いてみた。
「何てお願いしたんだ?」
「アキラと一生一緒に居れますように」
「/////」
「アキラは?」
「僕も…ヒカルと一生一緒に居られますようにって…」
「じゃあ、今年の目標は、本因坊取ってアキラと結婚だな」
「えっ?」
…結婚?
僕とヒカルが。
「嫌か?」
「そんなことない…」
とても嬉しい!!
「そんじゃ頑張るか」
「本因坊取れなかったら、どうするんだ?」
「取れなくても結婚はしたい。けど、タイトル持ってた方が」
「これからも宜しくな」
「こちらこそ」
そんな訳で、僕達は近々結婚することになりそうです。