僕は幼い頃から碁にしか興味がなくて、一般的には成長すると恋やお洒落に興味が出てくるらしいけれど、僕の場合そんなことも起こらず碁に邁
進する日々。
それが当たり前だったし不満はなかった。
ヒカルに出会うまではね…。
始めは彼の碁に魅せられただけだったけれど、彼がプロなり一緒に打つようになって…。
自然と笑顔で女の子に囲まれているてヒカルの姿に嫉妬して悔しくて…。
そう…僕はヒカルに恋をした。
ヒカルにライバルではなく女性として見て欲しくて、それまで見向きもしなかったファッション雑誌等に手を出して見てみるものの、どうしたら
良いのか解らなくて…。
お化粧なんて更に解らなくて、パニック寸前。
でも母に相談するのも恥ずかしくて…1人で奮闘する日々。
碁以外のことで、こんなに頭使うなんてね…。
そんな頃の僕誕生日…。
「好きだ!」
ヒカルに告白されてた。
信じられなくて嬉しくて…何かの間違いではないかと思ったけど、ヒカルは本気で…もちろんOKの返事をした僕。
それから付き合い始めてすぐ対局中並みの集中力で雑誌を見ているのと、服を広げてあーでもない…こーでもないと悩んでる所を見られて女性と
して見られたくて、お洒落と格闘奮闘してることがヒカルにばれた。
「確かにライバルだけど、お前を女としてみなかったことなんてないぞ」
そう言って笑うヒカル。
嬉しい…。
「それにな、お前は今でもキレイなんだから頑張らなくっていいの。悪い虫が付くと困るしさ」
「えっ、悪い虫って…?」
「ホントお前って、自分のことには無頓着だよな…」
ヒカルが言ってる意味が解らずにいたら、彼は呆れたと言いたそうな顔をして僕を見ていた。
そんなやり取りの後、ヒカルが僕の服を選んでくれるようになったのだけど、どの服も僕だったら選ばないものばかりで恥ずかしかったけどヒカルが…
似合うぞ!
可愛いぞ!
って、言ってくれるから嬉しくて頑張って着こなした。
他にも僕が行ったことがない場所に連れて行ってくれたり、ヒカルの院生仲間の研究会に連れて行ってくれて友達が出来たり…。
ヒカルのお蔭で、僕の周りの風景がカラフルになった。
今振り返れば、碁にしか興味がなかった頃は回りの景色が単調…モノクロだった気がする。
僕はヒカルに出会えて良かったと本当に思う。
そして、ヒカルと付き合い始めて何度目かの誕生日。
「結婚しよう」
ヒカルにプロポーズされた。
もちろん僕の答えは……
「はい」