「アキラ…どこ行った?…アキラ…」
あっ、ヒカルが起きた。
速く戻らないと…。
「ここにいるよ」
「オレに黙ってどこにも行くなって言ってるだろっっっ!!!」
バッシーンッッ!!
「っ………っっっ!!」
ヒカルが僕の頬を叩いた。
普段のヒカルなら、僕を叩くなんて考えられないけど、今のヒカルはしょうがない。5月5日だから。
ヒカルはGWの5月1日~6日の朝まで、僕をこの部屋に閉じ込めて、ヒカルも一緒に閉じ籠る。
僕と一緒に閉じ籠る前…15才の頃から、予定を入れずに閉じ籠るようになった。
そして17才の時、僕は初めて閉じ込められた。
何が起きてるのか解らなくて混乱して、帰ろうとする僕を逃げられないようにして…。
叩かれたりもしたっけ。
普段のヒカルとは雰囲気が違っていて、初めてヒカルを怖いと思った。
6日の朝になって必死で謝られて、閉じ込めた訳を話してくれて…。
突然消えた佐為のこと…。
僕が佐為のように突然いなくなるんじゃないかと不安になって、閉じ込めたこと…。
それで、納得してしまう僕も可笑しいのかもしれないけど、あの時のヒカルを見たら、この時期に1人にして置くことは出来ないと直感したんだ。
きっと、佐為もヒカルがどうにかなってしまうことを望んでないから…。
僕とヒカルで、神の一手を極めて欲しいと思ってる筈。
その為なら僕は喜んで、ヒカルに閉じ込められてあげる。
それから、僕もこの時期には予定を入れずに、ヒカルと一緒にいるようになった。
2人で引き篭もってる間は、僕もヒカルも携帯の電源も切ってるし、誰とも連絡を取らない。
「お前はオレの側からいなくなったりしないでくれよ」
僕をどこにも行かせまいと、僕を必死に抱きしめるヒカル。
そんなに必死にならなくても、どこにも行かないよ。
「お前までいなくなったら…オレ、生きていけない」
解ってる。
僕も君がいないと生きていけないと思う。
「どこにも行かないよ。だから安心して」
僕はヒカルの片間も撫でる。
「アキラ…お前はオレより先に逝くなよ…。1日で良いからオレより長く生きて…」
「うん…」
「約束だからな…」
「うん」
神様が叶えてくれるか解らないけど、ヒカルの希望は叶えたい。
でも1日も1人は辛いから、1分ぐらいが良いかも。
僕の返事に安心したのかヒカルは眠ってしまった。
明日になったら、呼び方も「塔矢」に戻るヒカル。
僕も「進藤」に戻る。
そして、何事もなかったようにライバルに戻る。
毎年たった5日だけの、お互いを束縛するような引き篭もり生活はいつまで続くのかな。
僕達2人の人生が終わるまで?