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(アキラサイド)

「お母さん、結婚写真見せて」
「えっ?」

突然、12才の娘に言われて困った。
何故かって、僕は結婚写真を撮っていない。
それどころか、結婚式自体やってなんだ。
ヒカルと結婚した時、スケジュールが一杯一杯で余裕がなかったし、僕がドレスとか…そういうのが好きではなかったからね。

「市河のお姉ちゃんに結婚式の写真見せて貰ったの。それでお母さんのが見たくなったの」

市河さん…恨みますよ…。
あっ、いや…市河さんもこうなると思って見せた訳じゃないだろうし、市河さんを恨むのはお門違いかな。

「結婚式もやってないし写真も撮ってないから無理だよ」

誤魔化しても何にもならないから、正直に話すと、信じられないという言葉が返ってきた。

「えーっっっ!!結婚式やってないの?!写真も撮ってないなんて信じられない」
「………」
「お母さんって、パーティーでもドレス着ないよね…。お父さんと同じスーツばっかり。お洒落したいと思わないの?」
「………」

娘にそこまで言われるなんてと落ち込みそうになる。

(もしかして、これが反抗期ってやつなのか?)

僕が20才で産んだ娘は10才でプロになった。
囲碁バカだけど友達も多くて、流行りのスマホゲームでも楽しく遊んでいたり、お洒落にも興味があるみたい。
最近は後援会やタイトル戦のパーティーにも顔を出すことがあって、ワンピースにカーディガンとか、シンプルだけど可愛い格好で出席している。
僕は自分が主役でもスーツで済ませてしまうことが多くて。

「どっちが主役か解らないな」

緒方さんに嫌味を言われたこともあったっけ。
忙しいくて、ヘアメイクや着付けをやってる時間が勿体ないんだ。
解ってるくせにそういうこと言うんだよね…あの人は。





●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇





「だから、写真ぐらいは撮った方が良いって言っただろ」
「…………」
「大きくなったら、見せろって言われるかもしれないから撮っとこって…」
「………』

ヒカルや母に散々言われたね…。
ヒカルの予想通りになって、あそこまで言われて、ちょっと後悔してる。

「今からでも撮れば良いじゃん。喜んでくれると思うぞ」
「えっ?」
「今なら時間取れるし、授与式関係のパーティーも、これからドレスにしても遅くはないだろ」
「ヒカル…」
「オレもスーツ姿よりドレス姿が見たいしな」

……あ~~やっぱり、見たいだけなんだ。
君に励まされて嬉しいと感じたことが、なんだか情けないような?
まあ、良いか。



そんな訳で、僕達は10年越しの結婚写真を撮ることになって、母と娘は大喜び。

「お母さんキレイ!」

僕のウエディングドレスを見た娘は大はしゃぎ。
ついでに、ヒカルも大騒ぎ、

鼻の下が延びてるぞ。



写真撮影を見ながら、娘は母に誓ったいたらしい。

「おばあちゃんっ!わたしは絶対結婚式するからねっ!」
「楽しみにしてるわ。結婚式まで元気でいなくちゃね」

予想通り、娘が派手な結婚式を挙げるのは10年以上未来のことだ。


END



MOTHERを書いた後に、ふと思いついた結婚式挙げてなかったアキラが娘に突っ込まれる話でした。
娘ちゃん(名前未設定)は、多分計算間違えてなかったら4月から中学生なんで、そろそろ反抗期でしょうか?
ヒカルにも「お父さん嫌い」みたいなこと言い出すのかな?落ち込むヒカルが目に浮かぶ(笑)
あっ、ヒカルと明子さんは密かに「よくやった!市河さん」とお礼してると思います。

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