NIGHTMARE 01
(アキラサイド)

今日の進藤とのデートは覚悟を決めて、普段は着ないスカートをはいて可愛い感じにしてみようと思ったものの……何をどうして良いのか解らなくて、お母さんが勝手に買っておいてくれた服を広げて固まってたら…。

「アキラさんどうしたの?」
「進藤と会う約束をしてるんですが、何を着ればさ良いか解らなくて…」

普段は洋服になんて興味がないからお手上げだ。

「まあ♪やっとアキラさんもお洒落する気になってくれたのね♪」

満面の笑みで、とても嬉しそうなお母さん。
こうなるとスイッチが入ってしまう訳で…。
そうなると、僕はお母さんに言われるままの着せ替え人形になる。
今までは正直鬱陶しく感じてたけど、今回は有り難いと思った。

高いテンションで見送られたのには、いつもながらちょっと引いたけどね…。






●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇






「ととと塔矢……」

待ち合わせ場所に着くと既に進藤が居て、僕を見るなり固まった。
そこで固まられると、似合ってないのかと不安になるんだけど…。

「どう…似合う?」
「ああ…似合い過ぎてて、可愛い過ぎて固まった…」

それは良かった。
お母さんに選んで貰った甲斐があったよ。

「さあ、飯食ったら今日も思う存分打ちますか」
「あの…進藤…」
「なに?」

頑張れ!僕。

「今日は映画とか買い物行かない?」
「えっ?」
「嫌?」
「嫌じゃないけど…良いのか?」
「うん…」

こうして、進藤と恋人という関係になってから始めて、碁が絡まないデートをすることになった。

進藤がどんなふうに洋服を選んでいるのか、どんな映画が好きなのか…知らなかった一面が見られて、碁を抜きにしたデートも楽しいかな。

「で…何があった?」
「えっ?」

一通り回った後、カフェでコーヒーを飲んでいたら、真剣な顔した進藤に尋ねられた。

「なな何もないよ…」
「嘘つけ。打ちたいくせに無理して我慢してただろう?」
「そんなことないよ…」
「で…何があった?」

この顔は棋士モードの進藤だ。
こうなったら逃げられないな。
観念して進藤に夢のことを話す。

「はあ、夢?オレがお前に別れようって?」
「うん……」

進藤の表情から、驚いているような…呆れているような雰囲気を感じる。

「あのな…オレがお前を振るなんて絶対ないからな。認めて貰いたくて2年ぐらいで、プロになったオレのパワーを舐めるなよ」

溜め息をこぼした後、進藤がそう言い切ってくれるのは嬉しいけど…。

「でも…夢だけじゃなくて……」
「うん?」
「藤崎さんと楽しそうに話してたし…」
「あちゃ~~やっぱり見られてたか…」

進藤が明らかに「しまった」っという顔をしている。

「あれはな文句言われてたの。楽しい訳ないだろ」
「えっ?」
「「塔矢さんを苛めたら許さない」って煩いんだよ。アイツお前のファンだしな」
「嘘?」
「嘘なもんか」

恋のライバルだと思っていた藤崎さんが僕のファンで、しかも僕達のことを応援してくれてるなんて驚きだよ。

「で、だな…オレだって塔矢が可愛い服着てくれたら嬉しいけど、無理はしてほしくないな。打てるだけでもオレにとっては十分デートだし」

進藤…。

(馬鹿だな…僕は)

進藤の気持ちを知って嬉しくなると同時に恥ずかしくなった。
何があっても必死に僕のことを追いかけてくれたよね。
そんな進藤が僕を振る訳ないのに…。

「あのさ」
「何?」
「これからも、たまには可愛い格好したアキラも見たいな…なんて♪」
「良いよ」

ちょっと照れるけど、進藤が喜んでくれるなら可愛い格好も良いかな。

「あっ、でも、こんな可愛い格好はオレの前だけにしてくれ。ライバルを増やしたくないから」

喜んだと思ったら、急に真剣な顔でそんなこと言い出した。

「心配しなくても僕は、そんなにモテないよ」
「いいやっ!アキラは自分の魔力を全然解ってない!」
「…大丈夫だよ。僕にはヒカルしか考えられないから」

熱く力説するヒカルに笑いが込み上げる。

(そんなに力説しなくても、僕に言い寄られたことないんだけどな…)

告白されてお付き合いを申し込まれたのは、ヒカルが初めてだったし。

「アキラッッ!」

嬉しさを爆発させながら、僕に抱きついてくるヒカル。
僕の態度や言葉に全力で喜んでくれるのを見ると「大事にされてるな…」と思う。
これからは回りがどんな状況になっても、ヒカルを信じよう。

僕は心に誓った。

それから、ヒカルと別れる…なんていう悪夢は見なくなった…。

END


~オマケ~
「なあ、アキラって呼んで良い?」
「と突然何を言い出すんだっ。恥ずかしい…/////」
「そんなこと言わずに良いだろ…なっ」
「………良いよ」
「ヤッターーーーーーッッッ!!!」


~オマケEND~


想像以上にアキラを可愛く書けたようは気がする…かなり甘くなったんではないでしょうか(///∇///)

オマケはどこかに入れたいと思ったものの上手く入らなかったので、オマケにしてみました。消すのは勿体ないので(^_^;)
ヒカルを名前で呼ぶのは、まだ恥ずかしいアキラだけど「いつか僕も名前で呼んでやる!」と決意してるのです!初めて呼んだ時、ヒカルは卒倒するぐらいに喜ぶのですよ(///∇///)
そして、名前で呼びあうようになりアキラがヒカルが一人暮らしをしている部屋になり…猛スピードで結婚へまっしぐら!

6/25付ほDIARYでこのお話の裏話を、もう少しだけ綴ってます。
感想等も大歓迎!
お読みいただきありがとうございましたm(_ _)m

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