「アキラさんどうしたの?」
「進藤と会う約束をしてるんですが、何を着ればさ良いか解らなくて…」
普段は洋服になんて興味がないからお手上げだ。
「まあ♪やっとアキラさんもお洒落する気になってくれたのね♪」
満面の笑みで、とても嬉しそうなお母さん。
こうなるとスイッチが入ってしまう訳で…。
そうなると、僕はお母さんに言われるままの着せ替え人形になる。
今までは正直鬱陶しく感じてたけど、今回は有り難いと思った。
高いテンションで見送られたのには、いつもながらちょっと引いたけどね…。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「ととと塔矢……」
待ち合わせ場所に着くと既に進藤が居て、僕を見るなり固まった。
そこで固まられると、似合ってないのかと不安になるんだけど…。
「どう…似合う?」
「ああ…似合い過ぎてて、可愛い過ぎて固まった…」
それは良かった。
お母さんに選んで貰った甲斐があったよ。
「さあ、飯食ったら今日も思う存分打ちますか」
「あの…進藤…」
「なに?」
頑張れ!僕。
「今日は映画とか買い物行かない?」
「えっ?」
「嫌?」
「嫌じゃないけど…良いのか?」
「うん…」
こうして、進藤と恋人という関係になってから始めて、碁が絡まないデートをすることになった。
進藤がどんなふうに洋服を選んでいるのか、どんな映画が好きなのか…知らなかった一面が見られて、碁を抜きにしたデートも楽しいかな。
「で…何があった?」
「えっ?」
一通り回った後、カフェでコーヒーを飲んでいたら、真剣な顔した進藤に尋ねられた。
「なな何もないよ…」
「嘘つけ。打ちたいくせに無理して我慢してただろう?」
「そんなことないよ…」
「で…何があった?」
この顔は棋士モードの進藤だ。
こうなったら逃げられないな。
観念して進藤に夢のことを話す。
「はあ、夢?オレがお前に別れようって?」
「うん……」
進藤の表情から、驚いているような…呆れているような雰囲気を感じる。
「あのな…オレがお前を振るなんて絶対ないからな。認めて貰いたくて2年ぐらいで、プロになったオレのパワーを舐めるなよ」
溜め息をこぼした後、進藤がそう言い切ってくれるのは嬉しいけど…。
「でも…夢だけじゃなくて……」
「うん?」
「藤崎さんと楽しそうに話してたし…」
「あちゃ~~やっぱり見られてたか…」
進藤が明らかに「しまった」っという顔をしている。
「あれはな文句言われてたの。楽しい訳ないだろ」
「えっ?」
「「塔矢さんを苛めたら許さない」って煩いんだよ。アイツお前のファンだしな」
「嘘?」
「嘘なもんか」
恋のライバルだと思っていた藤崎さんが僕のファンで、しかも僕達のことを応援してくれてるなんて驚きだよ。
「で、だな…オレだって塔矢が可愛い服着てくれたら嬉しいけど、無理はしてほしくないな。打てるだけでもオレにとっては十分デートだし」
進藤…。
(馬鹿だな…僕は)
進藤の気持ちを知って嬉しくなると同時に恥ずかしくなった。
何があっても必死に僕のことを追いかけてくれたよね。
そんな進藤が僕を振る訳ないのに…。
「あのさ」
「何?」
「これからも、たまには可愛い格好したアキラも見たいな…なんて♪」
「良いよ」
ちょっと照れるけど、進藤が喜んでくれるなら可愛い格好も良いかな。
「あっ、でも、こんな可愛い格好はオレの前だけにしてくれ。ライバルを増やしたくないから」
喜んだと思ったら、急に真剣な顔でそんなこと言い出した。
「心配しなくても僕は、そんなにモテないよ」
「いいやっ!アキラは自分の魔力を全然解ってない!」
「…大丈夫だよ。僕にはヒカルしか考えられないから」
熱く力説するヒカルに笑いが込み上げる。
(そんなに力説しなくても、僕に言い寄られたことないんだけどな…)
告白されてお付き合いを申し込まれたのは、ヒカルが初めてだったし。
「アキラッッ!」
嬉しさを爆発させながら、僕に抱きついてくるヒカル。
僕の態度や言葉に全力で喜んでくれるのを見ると「大事にされてるな…」と思う。
これからは回りがどんな状況になっても、ヒカルを信じよう。
僕は心に誓った。
それから、ヒカルと別れる…なんていう悪夢は見なくなった…。
END
~オマケ~
「なあ、アキラって呼んで良い?」
「と突然何を言い出すんだっ。恥ずかしい…/////」
「そんなこと言わずに良いだろ…なっ」
「………良いよ」
「ヤッターーーーーーッッッ!!!」
~オマケEND~