「いよいよ明日ね~♪緒方さんならアキラさんを幸せにしてくれると思うわ」
明日は緒方さんと僕の結婚式なんだけと…。
お母さんは自分のことのように喜んで盛り上がってるけど、僕は気分は急降下で沈んでいる。
僕は正直言って、緒方さんとの結婚なんて御免だ。
何歳離れてると思ってるんだ。
(お母さんは緒方さんの本性を知らないからな…)
母の前では礼儀正しい好青年?だからね。
…まあ、悪い人ではないのだけど、緒方さんの女性遍歴を見てると、夫にはしたくないかな?…なんて。
語には集中出来そうだけど。
それよりも、僕には進藤ヒカルというれっきとした彼氏がいる。
なのに、どうしてこんなことになったかと言うと…僕と緒方さんが婚約者だからだ。
こんなに早く緒方さんとの結婚話が動くなんて思っていなかったから、ヒカルと付き合ってることを話してなかったんだよね、
は~~~~~あ…どうしよう…。
そういえば、結婚の話が出て直ぐヒカルと話たっけ。
「お前も緒方さんも、なんで断らないんだよ」
「盛り上がってふお母さんに逆らう勇気がないんだよ」
「解るけど…だからって…」
ヒカルもお母さんの性格は解ってるから理解はしてくれているようだけど、納得はしてないようで…。
「なんで、緒方さんな訳?」
電話の向こうから、低い声が聞こえて来る。
「知らないよ…。僕が知らないうちに、両親が勝手に婚約者になってだから」
「で、なんで今結婚なんだよ」
「まさか、僕も18になって直ぐ結婚の話が出るとは思ってなかったよ」
こんなことなら、ヒカルと付き合ってることを、お母さんに話しておくべきだった…。
「てか、なんで今?オレ、お前と引き離すために、こっちに飛ばされた?」
「それは無いと思う…」
「けどさ…」
今、ヒカルは韓国に囲碁の交換留学中なんだ。
ちなみに、こっちには秀英が来ている。
ヒカルを推薦したのはお父さんだから心配なのは解るけど、お父さんはヒカルのことを気に入ってるから、そんなことはしないと思う。
「オレには嫌みばっかりいうくせに、緒方さんも塔矢先生や逆らえないんだな…」
「お父さんと言うより、お母さんに逆らえないから」
「………」
お父さんも緒方さんとの結婚には乗り気ではないんだけど、お母さんに逆らえなくて静観してたりする。
「当日までに断るから心配しないで…」
「大丈夫か?」
「ああ。ヒカルは碁の勉強に集中して。せっかくの機会なんだから。僕が行きたいぐらいなんだから」
「解ったよ」
と、言ったものの…僕も緒方さんも断ることが出来ないまま、お母さんの勢いに押されたまま、結婚式当日を迎えてしまったんだ。
(ヒカルー凄く怒ってたな…)
はあ~~~~。
さすがに、結婚式にヒカルを招待する勇気はなかった。
「どうするんですか?」
僕の隣で歩幅を合わせて歩いている緒方さんに、小声で尋ねた。
「入籍しなければなんとかなるだろ」
「…………」
いつまでも入籍しないで暮らすなんて、お母さんが許すだろうか。
(無理だな…)
バンッ!
「アキラっ!」
「ヒカル…?」
えっ?日本にいない筈のヒカルが、どうしてここに?
「どうして?」
「お前を緒方さんなんかに渡す訳ないだろうが」
「ヒカル……」
嬉しい…。
「やっと来たか」
えっ?緒方さん…。
なんかホッとした顔してません?
もしかして、ヒカルを待ってた?
「永夏に不戦敗したんだから、あとで、きっちり返してもらいますよ」
「アキラ君を嫁に出来るんだ。それぐらい安いものだろう?」
そう言う緒方さんが嫌みな顔なドヤ顔。
「これはどういうことなの?説明してほしのだけど?」
ヒカルと緒方さんの会話に、お母さんが割って入った。
あっ、今結婚式の真っ最中でしたね。
参列の皆さんよ、驚いた顔をしてる。
当然か…。
「アキラさんをください!」
えっ、お母さんに説明しろって言われて、いきなりそれ!?
今、結婚式の真っ最中だって解ってるよね?
「えっ、なに?」
「進藤君?」
「えっ、誰なの?あの男?」
ほら、参列者が驚いてるよ。
「まあまあまあ…そうだったの。どうしてもっと早く言わないの」
お母さんが盛り上がってるから言い出せなかったんです。
「もう少し早く言いなさい」
お父さんは薄々気付いてたんじゃないかと思うのだけど…。
そこはあえて黙っておこう。
「あっ、そうだわ。せっかくだから進藤さんと式挙げたらどうかしら?」
はっ?
「えーーーーっっっ?!」
お母さんの爆弾発言に、式場内から驚きの叫びが上がった。
当然だと思う。
「あっ、それ良いですね!」
ただ1人にヒカルだけが、お母さんの提案に乗り気だ。
「あっ、オレ白のタキシード持ってない…」
結婚式の予定がないのに白のタキシードなんて持ってるわけないよね。
「進藤、心配するなタキシードならオレが準備してある」
「ヤッターッ!ありがとう緒方さん。…って、ちょっと待て…いつの間にオレのサイズ…」
「企業秘密だ」
企業秘密って…。
そういえば、緒方さんの今の彼女ってファッションデザイナーだったような?
その辺りのツテなのかな。
「緒方さん…その嫌みなドヤ顔やめて。オレを見た時ホッとした顔したの、皆にバラすよ」
「……うっ」
仕返しとばかりに、今度はヒカルが緒方さんに嫌みな、ドヤ顔を向けている。
確かに、あんなに嬉しそうな顔は初めて見たかも。
結婚式は相手をヒカルに変えて数時間後に、改めてやることになった。
ヒカルの関係者ば囲碁関係以外いないんだけど、これで良いのだろうか?
「良いんだよ。後で電話しとくから。アキラと結婚出来て幸せ♪」
と言って、ニコニコと笑うヒカル。
(本当に良いのかな?)
結婚式の後、まだ留学期間がの残ってるヒカルは、韓国に即戻ったから結婚早々、少しだけ単身赴任になってしまったけど、僕のライバルとして確り勉強して来い!
この結婚式は、囲碁関係者の間で長い間、事ある毎に話題に上がり恥ずかしい思いをすることになる…。