「アキラの浴衣姿が見れたのは良いけど、どうして家に寄らないといけないんだよ~」
「たまには顔を見せないとダメだろ」
「しかもオレの実家近くの縁日に行きたいなんてさ~」
「嫌なのか?」
「嫌じゃないけど…」
知り合いに会ったら面倒くさいことになりそうだから、出来れば違う縁日の方が良いな…なんて。
(まあ、今年もアキラの綺麗で美人な浴衣姿を見れたから、別に良いけど)
紺色に何の花か解らないけど花柄の浴衣が、とても良く似合って…。
(明子さんのチョイスは最高だよな~♪)
オレの分も準備してくれてくれて有難い。
で、なんで実家に帰る羽目になったかというと…オレのおねだりから始まったんだ。
「今年もアキラの浴衣姿が見たい」
「いいよ」
おおっ!今年はあっさりOK 。
去年は粘りに粘ってOKもらったから、今年も粘ることを覚悟してただけにビックリだけど嬉しいぜ!
「ただし、ヒカルの実家に顔を出すことが条件だ」
喜んでたらそんな条件が出されて、ちょっと嫌な気分になった。
「僕達の休みの日に、ヒカルの実家近くで縁日と花火があるそうだからね。せっかくだし行こう」
「なんで知ってんの?」
「おば様に聞いた」
…彼女としてアキラを紹介してから、いつの間にかアキラとお袋は仲良くなっていて、メールなんかでやり取りしてるらしい。
「嫌たっていうなら、浴衣は着ないから」
「~~~~」
家に帰るのは面倒臭い…でもアキラの浴衣姿は見たいつてことで、泣く泣くアキラの提案を飲んだんだ。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「帰ったよ~」
「まあ、アキラさん…いらっしゃい」
お袋がニコニコと迎えてくれた。
どうせアキラ目当てだろ。
「暑かったでしょ。上がって」
「お邪魔します」
「アキラさん…浴衣良く似合ってるわ」
「…ありがとうございます」
「ヒカル…あんた…また浴衣借りたのね?ちゃんとお礼はしてるの?」
「してるよ」
「どうだか…」
あっ、その冷たい視線…息子を信じてないだろ?
「大丈夫ですよ。母は楽しんで進藤君に構ってますから」
「だと良いけど…」
アキラの言う通り、明子さんはメチャクチャ喜んでくれてるから心配ないよ…お袋。
「アキラさんみたいな美人で器量良い人が、ヒカルの彼女になってくれるなんて…どう考えても信じられないけど…せいぜい捨てられないようにしなさいよ」
アキラに捨てられる?
誰がそんなヘマするか!
彼氏の座を掴む為に、どれだけ苦労したと思ってるんだよ。
絶対!オレはアキラと結婚する!
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「あれだけ食べたのに、まだ食べるのか?」
縁日で色々食べまくってるオレに、アキラからの冷たい視線が向けられてる。
「しょうがないだろ。食べたいんだから」
「……」
というのは半分嘘で、縁日を回ってる間にオレの子供の頃を知る人達に、声をかけられまくり…アキラが彼女だとバレて…小さい頃の話をされたりしたから、恥ずかしくて食べて誤魔化してたりする。
(だから地元は嫌なんだよ)
オレと違って、アキラは楽しそうだけどな。
「出会った頃のヒカルを思い出せば想像はつくし、僕が知らない頃のヒカルを知れて楽しいよ」
アキラはニコニコ笑っている。
「おっ、進藤じゃん」
「えっ?マジ」
「久し振りっ!」
突然、3人組に声をかけられて、相手の顔を確認すると、小学校で一緒に遊んでた…山田に田中に松田?
(げっ?)
1番会いたくない奴等に会ってしまったかも。
4人でイタズラとか…よくしたからな…。
それを、アキラに知られるのは流石に恥ずかしい…。
「まさか、今日来てるなんて思わなかったぜ」
「囲碁だっけ?プロになってから会わなくなったもんな~」
「イタズラ好きで、じっとしてることが苦手な進藤が、何時間も座ってる職業に就くなんてな」
煩いぞ!お前等。
…って、言いたいけど口の中に食べ物が一杯で言えない…。
「……ってか、隣にいる女の人誰?」
「もももももしかして彼女?」
当然、アキラの存在気付く訳で…。
「うわ~進藤に、こんな美人な彼女なんて信じられない…」
「あのイタズラっ子に、こんな彼女なんて…」
「羨ましい~」
「あ~~煩い!お前等だってイタズラしてただろうがっ!」
オレだけって、そうだったみたいなのは許せん。
「あっ、そうだっけ?」
「そんなことより彼女紹介しろよ」
「嫌だっ!」
「なんでだよ~減るもんじゃあるまいし」
減る…っていうかライバルが増える。
コイツ等がライバルにないだろうけどさ…。
アキラ目当ての男を増やしたくないから紹介したくない!
まあ、そんなこと思ってても結局、紹介することになったんだよな。
「結婚式には呼んでくれよ」
とか言われて、オレもアキラも真っ赤になったのは言うまでもない。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「こういうことになると思ったから、嫌だったんだよ~」
「拗ねないでよ」
「来年も浴衣着てくれたら許す」
「良いよ…」
まあ、来年は浴衣姿よりもウエディングドレス姿が見たいな…なんて思ってたりする。