(どうして僕はここにいるんだろう…)
今日は進藤の誕生日。
恋人になって始めての誕生日だから、2人きりで過ごそうと言うことになって、いつも以上に腕によりをかけて手料理を作って、あとは2人でイチャイチャ出来たら良いな…なんて思ってたのに、一昨日突然泊まり掛けで碁のイベントに出ることになってしまって、計画が全て白紙になったせいで、自分でも解るくらいに機嫌が悪い。
お客さんには悟られないように営業スマイル全開だけどね。
それもこれも、急に仕事を入れるのスタッフのせいだ。
あれだけ「9月20日は仕事を入れるな」とお願いしたのに…。
「イベント出席者が体調不良で急遽欠席になってしまいまして…。それに、スポンサーに名乗りを上げてる方が、是非とも塔矢先生とお会いしたいと仰っているのでお願いしますよ」
何度断っても諦めてくれなくて、結局僕が折れることになってしまった…。
「スポンサーの希望なら断れないよな。しょうがないよな…」
進藤も残念そうにしていたな…。
(それにしても、この人話が長い…)
今、僕の目の前でスポンサーのおじさんが話続けてる。
しかも、碁の話から逸れてるぞ。
この人の息子の話なんて僕には関係ないし、会ってどうしろと言うんだ。
そもそもスポンサーとの食事会だなんて聞いてないぞ。
会うだけじゃなかったのか。
はあ~営業スマイルも疲れてきた。
帰りたい…。
(もしかして、今から新幹線に乗れば20日中には帰れる…)
時計が目に入って、、ふとそんなことを考えてしまった。
よしっ!
帰れると思ったら、覚悟は決まった。
「少し体調が優れないので帰らせて頂きます」
遠くでスタッフの声が聞こえるけど気にせず、さっさとレストランを飛び出しホテルに戻って荷物を持って、駅に向かって東京行きの新幹線に飛び乗った。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「間に合った…」
日付が変わる前に進藤のマンションに到着して、ホッとしていた。
「えっ?えっ?塔矢?何で?」
進藤は凄く驚いてるみたい。
当然か…。
「キミの誕生日に少しでも一緒に居たくて帰ってきたんだ」
「マジで?」
「嬉しくないの?」
「う、嬉しいに決まってるだろ!ただビックリしただけで…」
まあ、進藤の気持ちも解らなくはないな…。
今までの僕はからは考えられない行動だろうし…。
それだけ進藤が好きだと言うことだよ。
進藤、誕生日おめでとう!