「今年も言われたみたいだな」
「ああ…」
ヒカルに指摘されて苦笑いする僕。
「明子さんの愚痴聞くのが嫌なら、さっさとオレと結婚すれば良いだろ」
そうなんだけど、なかなか踏ん切りがつかなくて…。
普段は結婚について何も言わない母さんが、僕が35を過ぎてから、雛人形を飾る時だけ結婚ついて愚痴を言うようになった。
「初節句から、アキラさんがお嫁に行くまでは毎年欠かさず飾ろう…と固く誓ったけれど、まさかこんなに長く飾ることになるなんて…」
この時の母さんの視線は怖いくて痛い…。
「3日を過ぎたら即片付けてるのに…どうして貰い手がないのかしらね…」
「………」
「今頃は孫娘の為に飾ってだでしょうに…」
聞いていると心苦しくなるから、僕はさっさと逃げる。
とばっちりがあうのを避けてるのか、父さんも家にいない。
1年に1度だけなせいか、かなり心に突き刺さるんだよ…。
「いつまで迷ってるんだよ。何回プロポーズしたと思ってるんだ?100万回させる気か?」
「それもいいかもね」
「おいっ」
「冗談だよ」
「お前が言うと冗談聞こえないんだよっ!」
このやり取りも何回やったっけ?
この時期の定番になった気がする。
去年は10万回って言ってたかな?
「それになぁ、明子さんにはオレ達が付き合ってることバレてるぞ」
「だろうね」
母さんは僕がヒカルと付き合ってることを勘づいてるから、普段は何も言わないんだと思う。
そうでなかったら、お見合いがバンバン来てるよ…きっと。
「碁に集中したいって気持ちも解るけどなぁ」
結婚するって知られたら大騒ぎになるだろうし、したら孫はまだか?って言われて、碁に集中出来なくなりそうなのが納得出来ないというか…嫌というか…。
これはヒカルにも話して解ってもらってるけど…。
(そろそろ限界かな…)
ても、プロポーズで色々仕掛けてくるヒカルが面白いから、もう少し粘ろうかな♪