【家族が増えました】
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緒方さんから届いた葉書を持ったまま愕然とする僕。
(嫌がらせだ!絶対)
既に知ってる僕に、こんなものを送ってくるんだから。
一生結婚しなさそうな緒方さんにまで、先を越されるなんて…。
さすがにショックかも。
僕は22才に進藤ヒカルと結婚した。
囲碁第一、仕事第一、ワーカーホリックな僕は子供は欲しいけど、仕事をセーブすることが出来なくて、子供は落ち着いてから…ということになったのだけど、スケジュールが全く落ち着かない。
対局以外の仕事も断れなくて入れてしまうから…。
あっ、忙しくても夜の夫婦生活はちゃんとあったよ。
いくら碁が第一と言っても、ないとヒカルが持たないし…僕も寂しいから…。
そうこうしてるうちに…。
和谷君に追い越され…。
奈瀬さんに追い越され…。
伊角さんに追い越され…。
社に先を越され…。
越智くんに先を越され…。
市河さんにも先を越され…。
そして、遂に緒方さんに追い越され…。
「………ッッッ!!」
もうスケジュールなんか知るかっ!
このままだと、子供なんて夢のまた夢だ。
作ってやる!
その後のことは、出来てから考える!
「ただいま…」
決意したと同時に帰宅したヒカルに詰め寄って言い張った。
「作るぞ!」
「な、なにを」
「子供!」
「ああ…なんだ…」
帰宅した途端に僕に詰め寄られて、圧倒されてたヒカルだけど子供と聞いて笑顔になる。
「……やっとその気になってくれたんだ?」
「僕はいつでもその気だったんだ。ただ…スケジュールがネックで…」
「お前だからしょーがないじゃん」
ヒカルは碁が優先な僕の性格を良く解ってくれていて、解ってくれてるんだよね。
「で、なんで急に作る気になったんだ?」
緒方さんから届いた葉書を見せると、彼は苦笑いした。
「あー嫌がらせだな。でも本当に良いのかよ」
「ああ、僕も34だからね。のんびりしてると超高齢出産になりそうだし…」
1 人っ子は可哀想だから、もう1人欲しいし。
「じゃあ、今から作ろう」
「えっ、ちょっと、ま…」
僕はあっという間にヒカルに抱き抱えられて、寝室へと連れていかれた。
(こうなったヒカルは止まらないんだよね…)
まあスイッチ入れたのは僕だし、ヒカルが満足するまで付き合うしかないな。
久し振りだしね。
3ヶ月後…。
妊娠発覚。
僕達…というよりヒカルが本気を出したら、作ると決めた日に決めたのは流石だよ…。