…って言われても、オレは塔矢がいるからな…。
思わずチョコを受けっとってしまったけどどうすりゃ良いんだ?
先輩の女流棋士だし、下手な断り方したら、変な噂が立つかもしれないし…。
悩んでたら、塔矢の姿が目に入った。
うわ~メチャクチャ怒ってないか?
(ヤバイよな~)
なんで今、ここにいるんだよ。
塔矢はそのまま振り返ってその場を小走り去っていった。
(あっ、不味い……)
オレは慌てて塔矢を追いかけていたら、途中で何かに躓きそうになった。
(ん?)
包装された四角い箱を蹴っ飛ばした。
(これって、もしかして…オレにくれる筈だった本命チョコ?)
うわ~直接貰いたかった~~。
……………………
なんて言ってる場合じゃない。
塔矢にフラれたらどうしよう……。
「社~~~」
タイミングよく?対局で、こっちに来ていた社に泣きついていた。
「自分、アホとちゃう」
「………」
「付き合って初めてのバレンタインでとんだ失態やな」
「うっ…」
「チョコ手渡しで貰える筈やったのにな。でも結果的に貰えたから良かったんとちゃう」
「直接貰いたかった…」
「棋院の中で、告白&チョコ渡されるなんつー隙を見せた自分が悪い」
ごもっともです。
あんな所を見られなかったら、塔矢に直接渡して貰えてたんだ。
あ~~オレのバカっ!
「あ~このまま許してくれなかったらどうしよう…」
「玉砕覚悟で土下座して謝るしかないやろ」
「それしかないよな。もし許してもえなかったら?」
「その時はスッパリ諦めるんやな」
なんだよ…その笑顔。
くそ~他人事だと思って。
でも、社に言われた通り謝って、その後は…。
絶対、別れよう…なんて言わせないからな。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「塔矢、悪かったっ!ごめんっ!」
オレは塔矢の部屋に入った途端、土下座して謝った。
「………」
あ~まだ怒ってる感じ?
別れようって言われる前に
「お詫びに、ホワイトデーは最高のお返しするから」
「何言ってるんだ?君にチョコなんて渡してないぞ…」
「これ、なんだ?」
「そそそれはっ!…/////」
オレが見せた箱を見てビックリした後真っ赤になる塔矢。
可愛いな…。
「き君が持ってたのか…。別にお返しなんて良いよ」
「へっ?」
「1日中、打てくれたら良いから」
「えーっ!お前、せっかくのホワイトデーに彼氏と過ごしたいとか無いわけ?」
「ないよ。そもそも君と付き合うことにしたのは、打つ時間が増えると思っただけだし」
なんだよ…それ…。
オレと付き合ったのは、好きとかじゃなくて打ちやすくなるからだと~~。
嘘つけっ!
碁だけだったら、なんでチョコ貰った時怒ったんだよ。
ムカつくから、それを塔矢に言ってやった。
「じゃあ、なんでオレがチョコ貰ってるとこ見て、あんなに険しい顔してたんだよ?ヤキモチ焼いたんだろ~~」
「/////……」
うわ~~塔矢、赤くなって可愛い。
こんな可愛い顔見れるのはオレだけだよな。
いや、オレだけにしてほしい。
(今は碁がメインだけど、ゆっくりと恋人としての時間も増やしてやる)
ホワイトデーも碁だけで終わらせてたまるかっ!
頑張るぞっ!
あっ、塔矢から貰ったチョコは生まれてから食べたチョコの中で、1番旨かった。
来年も貰えると良いな…。
~おまけ~
新幹線に乗っていた社の携帯に、ヒカルからのメールが届いていた。
【塔矢と仲直りした(^○^)】
「…………」
(進藤も塔矢も…いつも惚気話を焼かしよって…。そもそも塔矢が進藤を振るわけないやん。あ~~リア充爆発せんかっ!……オレも彼女欲しいわ……)
社は大阪に着くまでふて寝したとか。