僕は、父方の祖母を訪ねていた。
「おばあ様、それは何ですか?」
「これは、うちの家系図よ。ボロボロになってたから修復してもらったの」
ついでに、公家言葉で書かれている物も現代語に訳してもらったの。
資料を広げながら、祖母は言ってコロコロと笑っている。
「せっかくだから一緒に見ましょう」
家系図なんて見たことないから僕も少し興味がある。
祖母の家系は平安時代の貴族から始まっていると聞いているけど家系図なんて見たことないし。
早速1番先頭に目を向けると…。
「えっ…?」
僕は目を疑った。
藤原佐為…?
まさか…この藤原佐為ってヒカルの…?
字もヒカルに教えてもらった字だし…。
「あの…?おばあ様、この藤原佐為について何か解りませんか?」
もし、この藤原佐為がヒカルが話してた佐為なら、彼にも教えてあげたい。
「そうね…。こっちの資料に家系図に載ってる人のことが書いてあるはずなんだけど…あったわ。藤原佐為、帝の碁の指南役で入水により死去だそうよ」
このころから碁打ちだなんて、ホントうちは囲碁バカ家系ね…。
と、祖母は笑っているけど、僕はそんな祖母の話を受けている余裕はなかった。
間違いない、ヒカルが話してくれた佐為だ。
「おばあ様、これお借りしても良いですか?」
祖母の返事を聞くや否や僕は家を飛び出していた。
早くヒカルに知らせてあげたい。
佐為が居た証拠を。
僕は一人暮らしをしている進藤のマンションに向かった。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「どうしたんだよ、アキラ」
「これ、見て」
僕は一刻も早くヒカルみ見てもらいたくて家系図を広げた。
「え?なに?家系図」
「いいから…ほら、ここ」
僕が指さした名前を見たヒカルの表情が、信じられないと言いたげなものに変わっていく。
「藤原…佐為?」
「キミが話してくれた佐為だよ。こっちの資料には「帝の碁の指南役だった」って書いてあるもの」
ヒカルに資料を見せると、何度も佐為の部分を読み返してる。
「僕の父方の祖母の家系図なんだよ。たまたま見せてもらってビックリした」
「佐為が…お前の…先祖?…」
「そうみたい」
「信じられない…」
「僕だって信じられないよ」
「アイツが居た証拠がこんな近くにあったなんてな」
ビックリだ…なんて言って笑うヒカル。
「アイツが居るうちに知りたかった」
「そうだね…」
佐為がこのことを知ったらどう思ったんだろうか。
ヒカル曰く五月蠅いぐらい飛び回って喜んだろう…って言ってるけど。
というか、僕も佐為に逢ってみたかったな…。
秀作が師匠なんて羨まし過ぎるよ。
「そうすると、お前の囲碁バカは佐為譲りって訳か…。なんかスゲー納得」
そういえば、碁のことになると融通が利かないって言ってたね。
「でも、何かスゲーよな。アキラの先祖の佐為がオレに憑りついて、お前と出会うきっかけを作ってくれたんだから、もう運命じゃん」
うん、僕もそう思う。
「オレ達を引き合わせてくれた佐為に代わって、神の一手を目指さないとな」
見てろよ!佐為。
と、決意を新たにするヒカル。
もちろん僕も決意を新たにした。