塔矢先生がオレを見て驚いている。
当然かもしれない。
また、誰にも連絡してないだろうから。
今日、塔矢は関西棋院での対局だった。
でも、開始時間になっても現なくて、しばらく経って「池に浮かんで居る所を発見されて病院に運ばれた」と連絡があった。
発見して救急車を呼んでくれた人が囲碁ファンで、棋院にも連絡をくれたらしい。
その電話をたまたま聴いたオレは、着の身着のまま新幹線に乗って、今ここにいる。
自分の対局はどうした?
そんなの知るか!
塔矢に怒られるかもしれないけど、塔矢が無事か確かめる方が先だった。
「たまたま棋院で聞いて……」
「そうか……」
隣で明子さんが憔悴してる。
もちろん先生も……。
そりゃそうだろう。
久し振りに帰ってきたら、こんなことになって……そうならない方が可笑しいだろ。
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先生が掛け合ってくれて、家族でもないのに集中治療室に入ることが出来た。
明子さんが「進藤さんが側に居たら起きてくれそうな気がするから……」と言いながら泣いていた。
「塔矢……」
なんでだよ……。
なんで、お前が自殺なんか。
しかも佐為と同じ入水自殺で京都でなんて。
先生達にこんな顔させて。 何があったんだよ。
この前、打った時は何も可笑しい所はなかったのに。
なんで……?
「なんでだよ……塔矢」