METAMORPHOS 09
(アキラサイド)

あれは、14才の子供の日を過ぎた頃、ヒカルが突然うちの碁会所に現れたんだ。

「佐為っ!佐為…どこにいるんだよ」

いつもの明るいヒカルとは違う辛そうで、心ここにあらずのような感じにだった。

「どうしたんだ?進藤」
「と塔矢…?」

ヒカルは僕に気付いてくれた。
今にも泣きそうな顔をしていて、驚いたことを覚えている。

「佐為がいなくなったんだ。きっとオレがアイツを放っといて楽しく打って、プロになりたいなんて言ったからだ。もうオレは2度打たない…。そしたら佐為が戻って来るかもしれない…」

えっ、さいってなんだ?
人なのか?
あっ、もしかしてネット碁のsaiと関係があるのか?
それよりも、進藤が碁を止める?
そんなバカな…。

辛そうに話すヒカルを見つめながらも、僕はそんなことを考えていて…。碁を止めようと思わせるsaiとはなんなのか、なんとしても知りたくて…知らないとヒカルを説得出来ないと思ったから、必死になって聞き出した。

やっとのことで聞き出した話は信じられない話だったけど…。

平安時代の碁打ちの幽霊に憑かれてた?
しかも、その幽霊は本因坊秀策として打っていた?

そんなことある訳がない…と思いたいけど出会った頃のヒカルの強さを思い出すと、信じてしまう僕がいた。
あの打ち方は秀策だし。

平安時代の碁打ちは藤原佐為といって、子供の日に突然消えてしまって、探し回っていたんだとか。

話を聞いた僕は必死なヒカル姿を見て、1人ではどうにも出来ないと思って、お父さんひ話そうとヒカルを説得して、家に連れて行った。





「そうか…saiは消えたのか…」

お父さんにsaiについて話すと、悲しそうにポツリと呟いた。

「信じてくれるんですか?」

絶対信じて貰えないと言ってたから

「確かに信じがたい話だが、そんなに辛そうにしてると信じようと思う」
「~~~~~」

お父さんにそう言われて言われて、泣き出してしまったヒカル。
後で聞いたら、saiのことを解ってくれる人がいてホッとして泣いてしまったのだとか。

「恥ずかしいから忘れてくれ」

と顔を真っ赤にして言うけど、ヒカルに近付けた出来事だったから、僕は忘れないよ。

「落ち着いたかね?」
「すみません…オレ……佐為を認めてくれたのか嬉しくて…」
「私ももう少し早くsaiに出会いたかった。そしたらもっと沢山打てたかもしれない」
「すみません…」
「進藤君が謝ることではないよ」

幽霊が憑いてると言っても誰も信用しないだろうから、隠してたヒカルの気持ちは解る。

「進藤君は碁は続けてプロにべきだと、私は思う」
「でも…打つのが楽しくなってプロになるなんて言って、打たせてやらなかったから…アイツは消えたんじゃないかって…。」
「自分が手塩にかけた弟子が、強くなっていくのは嬉しいものだ。saiも進藤君の成長を喜んでいたはずだよ。プロを目指す進藤君が嫌になって、消えた訳ではないと思うよ」

お父さんも僕や緒方さん達が、強くなっていくのを喜んでくれてたんだ。

「本因坊秀策の愛弟子をアマで埋もらせておくのは勿体ないしね」

ヒカルはは本因坊秀策について何も知らないから不思議な顔をしてたけど、秀策を師匠に持てるなんてどれだけ幸せなことか。
プロになって、僕のライバルとして目の前にいて欲しいと、その頃から思ってたから。

お父さんに励ませれたお陰で、ヒカルは碁を続けてプロになると言ってくれてホッとした。
お父さんはに話して良かったな。

「進藤君、打とうか」
「はいっ」

あっ、お父さん狡い!
お父さんと打った後、僕と打ってもらうからな!

と思って、不貞腐れてたっけ。





それから、改めてプロになりたいとヒカルは御両親に話したんだけど、何度話しても大反対されて…その間僕と恋人関係になって、今は女装して女性として生活ことになってしまっている。
プロになるために頑張っているヒカルに、僕も精一杯力になるよ。

Continue!




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